袴田さん無罪確定へ識者の見解、「検察の判断は失当」「不当な拘束長期化、検証を」
産経ニュース / 2024年10月8日 22時28分
昭和41年に静岡県の一家4人が殺害された事件で死刑が確定した袴田巌さん(88)に再審無罪を言い渡した静岡地裁判決について、畝本直美検事総長は8日、控訴を断念すると発表した。袴田さんの再審無罪が確定する。識者からは検察の判断に対する批判の声や、袴田さんの拘束が長期間に及んだ経緯の検証を求める声が上がった。
「控訴断念、検察の判断は失当」 元検事の高井康行弁護士
検察の判断は失当だ。
再審判決は5点の衣類の血痕について、当時のみそタンクの状況では赤みが残らないとした上で、衣類は警察官と検察官が連携して捏造したものと断定した。
しかし、証拠採用された検察側と弁護側の実験では、当時のみそタンクと同じ状況は再現されていない。それでも当時の状況で赤みが残る可能性はないとした判決は論理的に飛躍し過ぎていた。
証拠の捏造についても、判決は捏造を裏付ける証拠を何も指摘しないまま単なる憶測で認定しているに過ぎなかった。
法と証拠と論理に従えば控訴するのが当然だ。
検察が世論やマスコミの論調に左右された結果としか考えられず、検察の独立性に対する信頼が損なわれる。検察は改めて、その職責の重さを振り返るべきだろう。
「不当な拘束の長期化、検証を」 大阪大学法科大学院の水谷規男教授(刑事訴訟法)
検事総長談話は、袴田巌さんを長期間にわたって法的地位が不安定な状況に置いたことを謝罪しているが、長期化の理由を作ったのは検察だ。
検察は静岡地裁の平成26年再審開始決定に抗告し、東京高裁の差し戻し抗告審でも争った。警察や裁判所にも責任の一端はあるが、最も責任を問われるべきは検察だろう。
再審無罪判決は、検察側だけでなく弁護側の主張の多くも退けた上で、証拠を丹念に検討し、無罪を導いた。その判断について、控訴しないとする談話でなお不満を漏らすのは、理解に苦しむ。
不当な身柄拘束がこれほど長期に及んだ以上、検察による検証は当然だ。長期化を招く要因となった再審開始決定に対する検察官の抗告権の廃止と証拠開示の制度化が再審法改正の焦点になるだろう。
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