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ウクライナ汚職対策、日本が3月策定へ 法務・検察、レガシー生かし「司法外交」加速へ

産経ニュース / 2025年1月26日 10時0分

汚職追放に向け鈴木馨祐法相との会談に臨むウクライナのセルギー・コルスンスキー駐日大使=令和6年12月23日、法務省

ロシアの軍事侵攻に抗戦する一方、国内に蔓延する汚職が長年問題となっているウクライナを支援する日本政府が3月をめどに、ウクライナの贈収賄防止法制の確立に向けた具体案をまとめる。「法の支配」を広めるため、これまで東南アジアを中心に展開してきた「司法外交」を欧州にも拡大する第一歩。法整備支援の分野で世界をリードしたい考えだ。

EU加盟にも支障が

昨年12月23日、ウクライナのセルギー・コルスンスキー駐日大使と鈴木馨祐法相が都内で会談に臨んだ。

テーマの一つはウクライナの汚職対策だ。日本の提唱で先進7カ国(G7)が「ウクライナ汚職対策タスクフォース」を設置。昨年11月にはウクライナの検察当局者を招いたタスクフォースの会合が都内で開催され、12月には法務省がウクライナの司法副大臣を招いて汚職対策法制を議論していた。

法務省は会合での協議内容も踏まえ、今年3月までに結論をまとめる方針という。

ウクライナは、ロシアによる侵攻が始まった直後の2022年2月、欧州連合(EU)への加盟を申請。だが汚職対策がネックとなり交渉は進んでいない。ウクライナからのSOSを受けて、日本が「助け舟」を出したかっこうだ。

30年の歴史

司法外交は、法の支配の価値を世界中に行き渡らせるための取り組み。国連で採択された持続可能な開発目標(SDGs)には「すべての人々に司法へのアクセスを提供」することも盛り込まれており、達成への貢献を通じて国際社会での日本の存在感を高める目的もある。

そんな司法外交の根幹を成すのが、昨年で開始から30年の節目を迎えた、法務省が進める法制度整備支援だ。

犯罪白書によると、法務省は平成6年のベトナムを皮切りに、アジア各国の法制度の整備を支援。司法外交を進めてきた歴史がある。

今回のウクライナへの汚職対策分野での支援は、日本流の司法外交を、アジアだけでなく欧州にも展開する第一歩とも位置付けられる。

海外汚職摘発で実績

日本が他国に法整備支援を求められているのには、理由がある。海外を舞台にした汚職事件を摘発してきた歴史があるのだ。

平成9年に外国公務員贈賄防止条約に署名した日本は、11年施行の改正不正競争防止法に外国公務員への贈賄禁止規定を盛り込んだ。

当時は、こうした規定が「海外での日本の受注競争力をそぎかねない」とする意見が経済界だけでなく警察や検察など捜査当局の間でも根強かった。ただ、検察がその後、海外の贈賄企業の立件に踏み切ったことで、むしろ「日本の国際的信用を高めることになる」との評価が高まった。

最初の適用事例は19年、フィリピンの自動指紋照合システム事業への参入を巡る贈賄事件。福岡地検特別刑事部が捜査を担い、九州電力グループの現地子会社が同国捜査機関の元幹部らにゴルフセットを贈ったとして、福岡区検が不正競争防止法違反(外国公務員贈賄)罪で社員2人を略式起訴した。

さらに20年には、ベトナムの政府開発援助(ODA)事業受注を巡ってベトナムの公務員に贈賄したとして、東京地検特捜部がパシフィックコンサルタンツインターナショナル(PCI)の元役員らを逮捕・起訴。同罪で初めて法人も起訴した。

30年には、タイの発電所建設事業を受注した三菱日立パワーシステムズ(MHPS、現三菱パワー)の社員らが現地公務員に現金を渡した疑惑が浮上。特捜部と同社が同年6月に導入されたばかりの司法取引(協議・合意制度)を用いて捜査し、社員らの有罪が確定している。

司法外交アピールを

法務・検察関係者は「実績を積み重ね、日本が汚職などの違法行為には、極めて厳しく対応するとのイメージが国際的に確固たるものになった」と胸を張る。

法務省は来年度、汚職の捜査・公判経験を積む検事たちを牽引(けんいん)役として、これまで培ってきた司法外交のアクセルを、さらに踏み込む構えだ。

今年1月8日、日本弁護士連合会(日弁連)の会合で来賓の鈴木法相は、法務省による司法外交の取り組みを強調している。

同省関係者は「ウクライナの法整備支援を通じ、アジアにとどまらず全世界に向けて日本の司法外交をアピールしていくことが重要だろう」と力を込めた。

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