「究極の刑罰」慎重に検討 患者3人中毒死事件控訴審、再び無期懲役判決
産経ニュース / 2024年6月19日 20時41分
横浜市の旧大口病院で平成28年、入院患者3人の点滴に消毒液を混入して中毒死させたとして殺人罪などに問われた元看護師、久保木愛弓被告(37)の控訴審では死刑を求める検察側に対し、極刑を回避すべきかが最大の争点となった。東京高裁判決は19日、1審の判断過程を詳細に検討し、再び無期懲役とした。
「死刑が是認されるためには、裁判所の判断の具体的、説得的な根拠が示される必要がある」
この日の高裁判決が引用したのは、死刑判断を巡って最高裁が平成27年に出した決定だ。
裁判員制度では、国民が関わった1審の判断を尊重する流れが定着したが、「究極の刑罰」である死刑適用には最高裁が「慎重さと公平性」を求める判断を示していた。
控訴審で検察側が強調したのが、過去の判例との「バランス」だ。
検察側は、被告の犯行は「無差別殺人」や「連続殺人」に該当すると主張。過去に3人が死亡した殺人事件で死刑が回避されたケースは、心神耗弱が認定されたものや無理心中で、今回は回避する理由はないとした。一方の弁護側は、1審を覆せば「裁判員裁判の否定となる」としていた。
高裁判決は、死刑は懲役刑など他の刑罰と「質的な隔たり」があり、より慎重な検討が求められるとの立場に立った。
その上で、複数のことが同時に処理できないといった特性を持つ被告が仕事でストレスをため、不安軽減のために「患者を消し去るほかない」と犯行に至った経緯は、恨みなどから積極的に殺人に及ぶような犯行とは「やや異なる」とした。
看護師の仕事を離れ、再犯のおそれが高いとはいえないとも指摘。死刑が「真にやむを得ない」とまでは言えないという1審の結論を是認した。(滝口亜希、橘川玲奈)
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