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奪われた「努力の天才」たちの夢 京アニ事件裁判記録を電子書籍化

産経ニュース / 2024年6月27日 8時0分

事件当時の京都アニメーション第1スタジオ=令和元年7月18日、京都市伏見区

アニメーターら36人が死亡、32人が重軽傷を負った京都アニメーション放火殺人事件は、7月18日に発生から5年となります。産経ニュースではこの節目に合わせて、殺人罪などに問われた青葉真司被告(46)の1審京都地裁での裁判記録を電子書籍化し、公開することにしました。

昨年9月から始まった裁判員裁判は、143日間にわたる異例の長期審理を経て、青葉被告に死刑を言い渡しました。被告は控訴しています。

この間、被告人質問には10回もの期日が割かれ、また犠牲者遺族らの意見陳述も延べ100人近くに及びました。

犯罪史に残るような重大事件の被告が法廷で何を語ったのか、また紙幅の都合で省略・簡略化せざるを得なかった遺族や負傷者の思いを、できる限り網羅的に、そのままの言葉で残しておきたいというのが、電子書籍化の理由です。

電子書籍は以下のリンク(https://www.sankei.com/tag/topic/affairs_103/#kyoani_e_book)から読むことができます。

別表1の36-。一部犠牲者や負傷者について匿名審理が採用された京アニ事件の裁判で、この数字は、36番目に亡くなった24歳女性のことを指しています。

青葉被告から直接ガソリンをかけられ、全身に火を付けられました。事件から約3カ月後、病院で死亡するまでの壮絶な経緯が、家族の供述調書や意見陳述書の朗読という形で法廷で明らかにされました。

40度以上の高熱、壊死(えし)による指の切断、誤嚥(ごえん)リスクから水も飲めず、家族に何度も「喉が渇いた」「私、生きているの」と訴えました。集中治療室で彼女に付き添い、それでも頑張って生きてほしいと願っていた父親は、医師から「足や腸も切断しなければ助からないが、それでも助かるかどうか分からない」と医師に言われ、「もうこれ以上切り刻まないで」と手術を断ったといいます。

多くの遺族の陳述からは、京アニという会社の特徴-高い志を持った精鋭ぞろいの集団という側面が浮かび上がってきます。

幼い頃から非凡な絵の才能を発揮し、京アニ作品に感銘を受けてアニメーターを目指し、あこがれの会社に入ってレベルの高さに挫折し、それでも寝る間を惜しんでデッサンを重ねる-。京アニという会社が、「絵の天才」ではなく「努力の天才」たちによって成り立っていたことがよく分かります。

「京アニは『光の階段』をのぼっている」とねたんだ青葉被告に対し、死亡した別表1の7の母親は「京アニで働く人たちを分かっていない」と批判しました。

一連の意見陳述を聞いた青葉被告の心境は、それ以前とは大きく変化したように思えました。結審前の最後の被告人質問では「一人一人に努力があり、一人一人に目標があり、一人一人にやりたいことがあり、それと応援していた家族がいて、その全てを握りつぶしてしまった」と語っています。

重大事件を起こした一人の人間が一連の審理を通じ、自らの内面や行いにどう向き合ったのか、その変遷を知る上でも京アニ事件の裁判記録を通読することには大きな意味があると思います。

無料公開する電子書籍では縦書きのスタイルを採用し、文庫本のようにページをめくって読むことができる仕様にしています。文字の大きさや行間もお好みで設定できるようになっています。(京アニ裁判取材班)

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