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連続企業爆破事件50年 取材記者が振り返るあの時代と事件の教訓

産経ニュース / 2024年8月30日 16時32分

連続企業爆破事件について語る元産経新聞カメラマンの小野義雄氏=2月15日午後、東京都千代田区(斉藤佳憲撮影)

今から半世紀前の昭和49年8月30日、東京・丸の内で発生し死者8人、負傷者約380人を出した三菱重工ビル爆破事件に始まる連続企業爆破事件。産経新聞は、警視庁が犯人グループの過激派「東アジア反日武装戦線」を割り出したことをつかみ、逮捕日の50年5月19日付朝刊で「爆破犯 数人に逮捕状」のスクープを放った。今年1月には、長年逃亡していた桐島聡容疑者が自ら名乗り出た後に死亡。「歴史」に立ち会った記者らが、事件や時代背景について改めて振り返った。

一連の事件では、昭和49~50年に三菱重工ビルをはじめ11件の爆破事件が起きた。東アジア反日武装戦線の「狼」「大地の牙」「さそり」の3グループが犯行声明文を出し、警視庁は9カ月の内偵捜査の末、50年5月19日、リーダーの大道寺将司死刑囚ら8人を逮捕した。

産経新聞は社会部次長兼警視庁キャップだった福井惇氏ら警視庁担当記者を中心にした特別取材班が取材に当たり、逮捕をスクープ。同年の新聞協会賞を代表者として受賞した。今回は当時の警視庁サブキャップ、鈴木隆敏氏、捜査1課担当の生原伸久氏と村上克氏、カメラマンの小野義雄氏の4人に話を聞いた。

光るガラス、血だらけの人

-事件が起きた当時の時代背景は

鈴木氏「昭和40年代から各大学で起こっていた学園紛争は終わったが、一部は爆弾闘争に移った。46年12月には警視庁警務局長の土田國保さんの自宅が爆発され、妻が亡くなるなど、46年の暮れにはさまざまな爆弾事件が起きた。各セクトが爆弾闘争にのめりこみ始めていた」

-爆弾闘争に走る集団が出る中、49年8月30日、三菱重工爆破事件が起きた

生原氏「事件は夕刊の締め切りギリギリの時間。私が警視庁の刑事部長室の前を通りかかったときに『突き上げ』があった。捜査1課幹部の部屋に入って窓の方を見ると、第一生命ビルの方角に煙が出ていた。ガス爆発という情報もあったが、爆弾に変わった。そこから事件は始まった」

村上氏「日比谷公園を突っ切ると、三菱重工ビル前で、大勢の人が倒れていて、ガラスが道路いっぱいに雪が降ったみたいに積もってきらきら光っていた。倒れた人はみんな血だらけで動かず、地獄だと感じた」

鈴木氏「正確な情報が分かったのは翌日くらい。経験したことのないような爆弾事件だった。公安部が主体となり、刑事部が応援する形で合同捜査本部が設置された。警視庁が総ぐるみで捜査に当たった」

わずか数分間の逮捕劇

-どのような取材を行ったのか

鈴木氏「産経取材班には教本『腹腹時計』の存在などをスクープした。データをまとめるため、セクトごとに人名をカードに書いて整理した。逮捕日の間近には1週間くらいホテルに泊まりこんだ。ほとんど寝ずだった。愛宕署に捜査本部があり、逮捕の当日は車を1台ずつ借りて、捜査員を追う態勢で待っていた。午前6時くらいに出発したが、たちまちまかれた」

小野氏「逮捕日の早朝、愛宕署から出ていく警察車両を追いかけた。こっそり出てきた2人の捜査員を二手に分かれて追跡した。私が追った捜査員はそこからタクシーと徒歩、電車の乗り降りを繰り返し、振り切ろうとした」

「南千住駅で捜査員が降りた。私も降りたが、傘が電車のドアに挟まれた。頭を上げると、捜査員はホームの中程に立ち、こちらを見つめていた。逮捕現場までついていくことができた。大道寺将司元死刑囚は、どこにでもいるようなサラリーマン風の男。捜査員はさりげなく取り囲んで車に押し込んだ。わずか数分間だった」

-村上氏は翌年、東京・西新井の産院で起きた乳児・幸恵ちゃん誘拐事件の「犯人 きょう逮捕」のスクープで史上初の2年連続新聞協会賞を受賞した

村上さん「連続企業爆破事件はまさに公安の事件で、社としてはいい結果となったが、(捜査1課担当だった)自分にとって悔しさが大きなバネになった」

事件は終わっていない

生原氏「特ダネは雪だるまを作るようなもの。小さい雪を固めて、周りの雪をころころ転がして広がって頭をつける。役割分担が違う刑事部と公安部が雪だるまを作った。最終的に(公安担当が)いいネタをつかんできた」

-事件から50年。今年は逃亡を続けていた桐島容疑者が自ら名乗り出た末に亡くなった

鈴木氏「逮捕されたメンバーの一部は52年の『ダッカ事件』などの超法規的措置で釈放された。事件が終わってないということをみんなが考えないと、事件を起こした者が得をする。捜査員は『無償の功名主義』を支えにやってきた。これからもそう思ってほしい」

生原氏「桐島容疑者が名乗り出たことで、まだ終わっていないと改めて感じた。どこかに犯人はいる。未解決事件の逮捕を諦めないでほしい」

小野氏「指名手配犯の顔を忘れられないように情報を出すことの重要さを改めて感じた。国民がいかに治安の安定に協力してくれるか。近年は地域住民と警察とのコミュニケーションもなくなっている。防犯カメラの捜査が主流になっているが、国民ももっと情報提供するなど、協力してほしいと感じた」(聞き手 大渡美咲)

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