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<独自>事務所などから裁判参加「ウェブ口頭弁論」3月の開始から1万9千件 裁判官が認めぬケースも

産経ニュース / 2024年12月29日 16時0分

法廷にいなくても民事訴訟の口頭弁論に参加できる「ウェブ口頭弁論」が今年3月に始まって以降、10月までに計1万9086件実施されたことが29日、最高裁への取材で分かった。開始当初の利用の動きは鈍かったものの、徐々に増加し「順調に利用されている」(ベテラン民事裁判官)。弁護士らの負担軽減につながっているとの声が上がる一方、ウェブ対応の希望が毎回かなうわけではないとの調査結果もあり、裁判の「デジタルシフト」は道半ばだ。

「交通費かからず」

「期日によっては(口頭弁論は)5分で対応が終わることもある。圧倒的に時間効率がいい」

ウェブ口頭弁論を活用した経験のある「オーセンス法律事務所」(東京)の平沼夏樹弁護士は、制度をこう評価する。

インターネット回線を通じてビデオ映像で法廷の中と外をつなぐ「ウェブ会議システム」により口頭弁論を行う制度は、令和4年5月に成立した改正民事訴訟法などの段階的な施行に伴い、今年3月から始まった。利用については、裁判官が原告と被告の双方から意見を聞いた上で判断する。

最高裁によると、ウェブ会議システムを使った口頭弁論の実施件数は、開始当初の3月は546件だったが、10月には4734件に増加。累計で1万9086件となり、年内に2万件を超えることが確実視される。

日程も調整しやすく

多種多様な案件を扱う民事訴訟は専門性が要求される事件も多く、大都市圏の弁護士が、地方の裁判所で係争中の訴訟を手掛けることもある。口頭弁論の期日が指定されるたびに出張しなくてはならず、交通費などもかさむため弁護士・依頼者双方に負担が大きい。

だが、ウェブ口頭弁論を活用すれば、弁護士事務所などから法廷に出席できるため、出張費はかからない上、「重い事件記録を持ち運ぶ必要もない」(平沼弁護士)。

加えて、わざわざ法廷に足を運ぶ手間が省けることから原告・被告双方の予定を調整しやすくなり、訴訟の迅速化に資すると期待されている。

実施には地域差も

一方で、ウェブ口頭弁論の実施に「地域差」が生じているとのデータもある。

都内だけでなく地方の訴訟も手掛けるオーセンス法律事務所が4~10月、所属弁護士らを対象に実施した調査では、民事訴訟の第1回期日でウェブ口頭弁論を希望した5215件のうち実際に希望が通ったのは2490件と半数ほどだった。

拠点から遠い北海道での実現率は8割近かったが、地元である東京での1437件のうち、ウェブ口頭弁論の希望が通ったのは1割に満たない124件にとどまった。「第1回期日は必ず出廷してほしい」と求める裁判官もいた。

ベテラン民事裁判官は「関係者の顔を見ておきたい、と考える裁判官も弁護士もいる」と指摘した上で、「ウェブ口頭弁論は使いやすく、順調に利用されている。今後、さらに利用が進むだろう」と期待を込める。

ウェブ会議システムを使い法廷外から訴訟に参加する仕組みは、8年中に証人尋問などでも解禁される予定。最高裁は「安定した運用が図れるように努めていきたい」としている。(宮野佳幸)

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