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袴田事件 無罪の公算大も死刑求刑のなぜ 検察の主張「死んでいない」

産経ニュース / 2024年8月20日 10時0分

昭和41年、静岡県でみそ製造会社の専務ら一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(88)の再審公判は、9月26日に静岡地裁で判決が言い渡される。弁護側が無罪を主張する一方、検察側は改めて死刑を求刑。再審は無罪とすべき「明らかな証拠」があった場合に開かれるため無罪の公算が大きいとされるが、検察側は無罪は自明ではないとしており、地裁の判断が注目される。

「メンツではない」

「メンツのために死刑求刑したというのは、これっぽっちもない」

再審公判で死刑求刑を行った今年5月、検察幹部はこう強調した。

事件を巡っては袴田さんの死刑が一度確定したが、東京高裁が昨年3月、現場近くのみそタンクから見つかり犯行着衣とされた「5点の衣類」に残された多量の血痕が、みそに長期間漬かったにしては赤すぎると認定。捜査機関による捏造(ねつぞう)の可能性にも踏み込み再審開始を認め、昨年10月に再審公判が始まった。

過去の再審では検察側が非を認めて無罪を求めたこともあるが、検察側は今回、改めて有罪を立証して死刑を求めることにこだわってきた。

再審公判では、5点の衣類の「赤み」について、検察側証人の法医学者が、長期間みそに漬かれば血痕は一般的には黒くなるなどと証言。検察側が不利になる指摘も相次いだ。

ただ、検察幹部は「弁護側は赤みが残る可能性を『ゼロ』にはできていない」と指摘。DNA型鑑定などの無罪を決定付ける新証拠もなく「検察の立証が死んだことにはならない」とする。

「持ち主」重視

再審公判で検察側は「赤み」以外の立証に注力した。重視したのは、5点の衣類の「持ち主」の立証だ。5点の衣類が袴田さんのもので、犯行着衣だと立証できれば、有罪を推認させる柱になるからだ。

検察は再審公判で、袴田さんの実家から発見されたズボンの切れ端が、5点の衣類の紺のズボンの裾と一致し、サイズも当時の袴田さんの体格と一致するとした。

また、5点の衣類の半袖シャツにある穴と袴田さんの腕の傷の位置がほぼ一致しており、付着した血痕の血液型が袴田さんの型と矛盾しないとも指摘した。

別の検察幹部は「5点の衣類は一つ一つは決定的ではないが、複数ある証拠を素直にみれば犯行着衣であり、本人(袴田さん)のものといえる」と話す。

捏造は「非現実的」

ただ、5点の衣類が袴田さんのものだと立証できたとしても、捜査機関がそれを捏造したのであれば、前提が変わる。

ある検察OBは、再審公判の最大のポイントは「血痕の赤みではなく、捜査機関による捏造が可能かどうかだ」とする。

検察側は再審公判で、捏造説への反論を積み上げることで、5点の衣類が袴田さんが犯行時に着たものであることを証明しようと試みた。

検察側は、警察・検察が当初、5点の衣類ではなくパジャマを犯行着衣とする前提で公判を進めていたと指摘。その前提を覆す犯行着衣を捏造することは「およそ想定できない」と主張した。

さらに、袴田さんのものに酷似した衣類を用意して従業員に気付かれずに工場に侵入してみそタンクに隠すことは時系列などから「実行不可能で非現実的」だと訴えている。

弁護側は反論

再審公判で検察側は、5点の衣類以外にも証拠を提出している。

凶器とみられる「くり小刀」のさやの発見状況から、犯行に及んだ人物がみそ工場の関係者と推認されること。工場に出入り可能だった袴田さんが事件直後、体に約10カ所の傷を負っていたこと-。

ただ、弁護側は、一連の指摘はこれまでの確定判決などで間接事実としてさえ挙げられていないような点ばかりで「殊更に重要事実のように主張しているだけだ」と反論している。

9月の判決では無罪の公算が大きいとされるが、検察幹部は「警察の取り調べなどに問題がなかったわけではないが、4人の被害者がいる事件。証拠がある以上、捜査機関として死刑求刑は当然だ」としている。(桑波田仰太、久原昂也、星直人)

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