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「194キロは『危険』と当たり前の判断を」28日に判決、危険運転致死罪の適用が争点

産経ニュース / 2024年11月26日 19時45分

事故で亡くなった小柳憲さんの遺影を前に記者会見する姉=令和4年8月、大分市

大分市の一般道で令和3年、乗用車を時速約194キロで運転し、対向右折車と衝突して小柳憲さん=当時(50)=を死亡させたとして、自動車運転処罰法違反(危険運転致死)罪に問われた男性被告(23)の裁判員裁判の判決が28日、大分地裁で言い渡される。弁護側は過失致死罪の適用を主張し、危険運転致死罪の成否が争点。遺族は「194キロの運転は『危険』だったと、当たり前のことを認めてほしい」と話す。

「まるで自慢話だ」。今月12日の被告人質問。法廷でその一部始終を聴いた小柳さんの姉、長(おさ)文恵さん(58)は悔しくてたまらなかった。

被告はスピードを出す理由を「加速する感覚を楽しんでいた」と説明。高速道路で200~210キロを出した経験があるとも明かした。

法定速度の3倍を超えた事故の衝撃はすさまじく、小柳さんはシートベルトをしていたのに、それがちぎれて車外にほうり出された。対面した際、顔こそ寝ているようだったが、多数箇所を骨折。顔以外の全身は包帯で覆われていた。その姿は脳裏に焼き付いている。

一方、被告は衝突の瞬間の「記憶がない」と述べた。「弟が痛みを受けたときのハンドルの手応えくらい覚えておいてほしかった」と無念さが募る。

被告の行為を危険運転致死罪に問う-。そのことすらも一筋縄ではいかなかった。大分地検は4年7月、被告を過失致死罪で起訴し、危険運転致死罪を適用しなかった。

同罪で立件するには、単に高速度だっただけでなく、「進行の制御が困難」であったことを立証する必要がある。地検は現場が直線道路であることや被告の車の性能などを考慮し、200キロ近い速度が出ていても、制御困難とはいえないと判断したとみられる。

「誰が考えても危険な運転。弟があんな目に遭わされて、このまま終われない」

司法と一般感覚との乖離(かいり)を突き付けられたが、理解も納得もできず、署名活動を展開。必要なら自らハンドルを握り、同じスピードで実証実験を実施させてほしいと検察官に訴えた。

地検は同年12月、危険運転致死罪への訴因変更を請求、裁判所も認めた。公判で検察側は「進行制御困難な高速度」に加え、同罪の別の要件である他の車両への「妨害目的」も加えた形で罪の成立を主張し、懲役12年を求刑。一方の弁護側はいずれの要件も成立しないとして過失致死罪の適用を求めている。

公判ではプロドライバーなど複数人が出廷し、高速度が運転に与える影響を証言した。長さんは全ての審理を傍聴し、法律論としてそうした立証が必要なことは理解できた。だが最後まで違和感をぬぐえなかった。「194キロの危険性は、これだけ専門家に語ってもらわないと証明できないものなのか」

高速度運転を巡っては時速100キロを超える死亡事故でも「過失」と判断される事案が相次ぎ、法律の在り方を議論する法務省の検討会は13日、数値基準を設ける案を盛り込んだ報告書のたたき台を示した。

法改正に向けた進展といえるが、仮に法律が変わったとしても、施行までに発生した事故には現行法が適用される。法改正の動きを決して否定するわけではないが、議論が活発になるほど「現行法では危険運転致死罪は適用できない」と言われているようで、心が痛んだ。判決を目前に控え、「裁判所は今のままの法律でも危険運転を認めてくれると信じている。高速度運転の先例となってほしい」と語った。

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