「炎上」防止で不祥事会見にも同席 企業の危機管理巡り〝コンサル化〟する弁護士
産経ニュース / 2024年6月13日 8時0分
企業で不祥事や問題が起きた際の「危機管理」を巡り、法律の専門家である弁護士が果たす役割が高まっている。対応を誤ればただちに交流サイト(SNS)で拡散されて炎上し、株価の暴落や株主による訴訟提起などのリスクに直面する現代。記者会見への同席など幅広い貢献が求められるようになり、弁護士の「コンサルタント化」が進んでいる。
全局面で関与
「先生、どうしたらいいですか」
ある食品メーカーが頼ったのは、企業の危機管理に詳しい松田綜合法律事務所の岩月泰頼弁護士だった。
この企業が販売している加工食品で、食品表示法に抵触する可能性のある表示ミスがあることが、内部通報で発覚したという。岩月弁護士は、すぐに社内で調査委員会を設置するよう指示。どのような表示ミスが何件あったのか、商品のロット番号は何番かなど、細部を含めて全容把握に努めることの重要性を強調した。
判明した事実は、弁護士経由で当局にリアルタイムで共有。取引先へは、自主回収や再発防止策の説明などを行った。
内部調査、再発防止策の策定、当局対応、そして取引先への説明-。結局、この不祥事が訴訟に発展することはなかったが、そのすべてに関与した岩月弁護士は、こう語る。
「弁護士は以前は法律の助言だけを求められることが多かったが、今は危機対応に対する総合的な助言が求められる時代になっている」
一瞬で評価失墜
企業にとって不祥事後の対応は非常に重要だが、近年では記者会見での情報開示が不十分だったり、事態を過小評価したりして火に油を注ぐケースが目立つ。
小林製薬が製造した紅麹の原料を巡る問題では、社内調査に時間をかけ過ぎたことで情報開示や商品の自主回収が遅れ、非難が殺到した。
宝塚歌劇団の劇団員の女性が急死した問題でも、記者会見で当初、上級生らによる女性へのパワハラを認めずに遺族側の主張に異議を唱えたことで批判を浴び、最終的にパワハラを認め謝罪する事態となった。
多方面から注目を浴びた不祥事といえば、創業者の故ジャニー喜多川氏の性加害問題で揺れた旧ジャニーズ事務所だろう。
1回目の会見は、喜多川氏の性加害の事実を認めた一方、事務所として再出発したい意向を強調したことで紛糾。2回目の会見では社名変更と被害者への補償終了後の廃業を表明するなどしたが、対応は後手に回った。
ただ、会見では記者からの質問で東山紀之社長が言葉に詰まった際や、会社を法的にどう処理するかを問われた際に弁護士が回答するなどし、一定の安定感を印象づけた。
こうした弁護士の会見同席について、危機管理問題に詳しい甲南大学の園田寿名誉教授は「経営陣が保身に走っていると思われるリスクもある」と指摘しつつ「負うべき責任を世間に正確に伝え、過剰になりがちな攻撃を緩和する意味では有効」と話す。
高まるコンプラ意識
近年、企業の社会的責任や法令順守・コンプライアンスの意識が社会に浸透したことで、危機管理で求められる対策は複雑化している。
企業への法的なアドバイスだけでなく、広報文や会見での想定問答の作成、その企業が関係する経済事件が起きた場合には捜査当局や取引先への説明など、求められる仕事は多岐にわたる。
さらには、経営陣との関係構築も不可欠だ。不祥事では株主訴訟のリスクも大きくなるため、情報開示に消極的になる経営者も少ない。円滑な情報開示を行うためには、そうしたリスクも加味した助言が重要になる。
岩月弁護士は「企業がより社会的な存在になり、信頼されなければモノやサービスが『売れない時代』になった。法的問題を踏まえて対応を助言できる弁護士の役割は、今後も高まるだろう」としている。(久原昂也)
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