都側証人の公安部捜査員「捜査は適切だった」 大川原化工機国賠証人尋問詳報(上)
産経ニュース / 2024年10月16日 16時50分
外為法違反(無許可輸出)罪などに問われ後に起訴が取り消された「大川原化工機」(横浜市)の大川原正明社長らが、東京都と国に損害賠償を求めた訴訟。東京高裁で開かれている控訴審(太田晃詳裁判長)では、警視庁公安部の取り調べが適正に行われていたかどうかが争点の一つとなっている。9日の2回口頭弁論で行われた、実際に取り調べに立ち会うなどした警視庁の警察官3人の証人尋問を詳報する。
《まず、都側の証人として大川原化工機の元顧問、相嶋静夫さん=死亡=を取り調べた当時の警視庁公安部の捜査員Aの証人尋問が行われた》
都側の弁護士「相嶋さんは(大川原社内で)どういう立場の人か」
A「社長と同程度の発言力があり、社内でナンバー2という認識。経済産業省で規制について話していた」
《相嶋さんへの取り調べは計3人で行われ、主にAが質問し、別の捜査員2人がパソコンで打ち込んだ。Aは2人に規制要件に関わる部分や「殺菌」の認識について漏らさず記録するように指示し、それぞれのパソコンで入力したものをまとめたと語った》
都側の弁護士「相嶋さんは(社長や元役員に対し)噴霧乾燥機のマンホール、のぞき窓については(温度の低い箇所があるため)殺菌できないというメールを送っているが、相嶋さんはそういう指摘をしたか」
A「していません」
都側の弁護士「(噴霧乾燥機の内部の)マンホールについて相嶋さんはなにか言っていたか」
A「『薄くて壊れやすい』と言っていました。当時のメモにも残っている。菌が漏れて被曝してしまうと話していました」
都側の弁護士「相嶋さんに最低温箇所の質問をしたか」
A「していません」
都側の弁護士「なぜ聞かなかったのか」
A「相嶋さんは、すでに第一線を離れて顧問になっており、設計に携わる技術者から最低温箇所を聴取していたので(必要なかった)」
都側の弁護士「相嶋さんが供述していればどうしていたか」
A「もちろん記録していました。取り合わなかったということではありません」
× × ×
《続いて都側の弁護士は、規制の解釈を巡って争点となっている「殺菌」について質問した》
都側の弁護士「『殺菌』について相嶋さんはどう説明したのか」
A「『殺菌』という言葉は解釈の幅が広い。1%でも殺菌できれば『殺菌』といえると(説明していた)」
都側の弁護士「経産省の解釈では1%の菌を殺せれば殺菌か」
A「違います」
都側の弁護士「経産省の殺菌の解釈は」
A「特定の菌を1種類でも内部から死滅させられれば殺菌」
都側の弁護士「経産省の殺菌の解釈を相嶋さんに説明して理解したか」
A「なかなか理解してもらえませんでした」
都側の弁護士「(1審の)証人尋問で(証言した)捜査員は、Aが上司の係長に『相嶋さんから温度の上がらない箇所について指摘があった』と報告したのを聞いたという証言をしていたが、報告したのか」
A「そのような事実はありません」
都側の弁護士「熱風である程度菌が死ねば殺菌といえるという誤った解釈をAが示していたと(1審で)捜査員は証言しているが示したのか」
A「そのようなことはしていません」
都側の弁護士「相嶋さんは(輸出規制について)どのくらい関与していたか」
A「相嶋さんは輸出規制の件にほとんど関わっていないと」
都側の弁護士「すべての噴霧乾燥機を非該当とする判断を決めたのは誰か」
A「社長と元役員の2人」
× × ×
《続いて原告の大川原社側の弁護士による質問が始まった》
《Aは相嶋さんの取り調べを静岡で行い、上司の係長には電話で報告したと語った。相嶋さんと別の社員が、噴霧乾燥機内の温度が上がらない箇所があると指摘したというが、Aは「記憶にない」と語った》
原告側の弁護士「温度の認識について相嶋さんに聞かなかったのはなぜですか」
A「最低温度の箇所についてはすでに特定していたという認識で聞く必要がないと考えました」
原告側の弁護士「当時の取り調べのメモに温度に関する相嶋さんの指摘についての記載はないが、指摘を書き落とした可能性はあるか」
A「それはありません。要点は押さえています」
原告側の弁護士「(噴霧乾燥機内に)マンホールがあると殺菌はできない理由について相嶋さんはなんと言っていたのか」
A「マンホールは薄くて壊れやすいからと」
原告側の弁護士「相嶋さんはマンホールを開けたら内部殺菌できると話していたか」
A「温度実験をすでにしていて壊れないという話を聞いていました」
原告側の弁護士「ほかの捜査員から(そうしたことについて)指摘はあったか」
A「記憶にありません」
《続いて相嶋さんの長男がAに質問した》
長男「父、静夫の顔を覚えていますか」
A「はい」
長男「謝罪はありませんか」
A「亡くなったことにお悔やみ申し上げます。しかし、捜査は適切だったと考えています」
《裁判官の質問が終わり、Aの尋問は終わった。続いて捜査員Bの尋問に移った》
(中に続く)
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