取得財産でポルシェ2台とハーレー1台を購入 検察の追及受け「あっ車、買った」と告白 紀州のドンファン公判 被告人質問詳報
産経ニュース / 2024年11月15日 18時0分
「紀州のドン・ファン」と呼ばれた和歌山県田辺市の資産家、野崎幸助さん=当時(77)=に致死量の覚醒剤を飲ませて殺害したとして殺人罪などに問われた元妻、須藤早貴被告(28)の第21回公判が15日、和歌山地裁で開かれた。3日目となる被告人質問を実施。検察側が野崎さんの死への感情を問うと、被告は「どちらかといえば無」「目の前にいるなら文句を言ってやりたい」と述べた。
不審な検索履歴
まず検察側が俎上(そじょう)に載せたのは、被告の検索履歴。平成30年2月に野崎さんと結婚して以降、「老人 完全犯罪」などと検索していた。一方、被告はこれまでの被告人質問で、「昔から殺人事件とかグロテスクな事件を調べるのが好きだった」と述べ、こうした検索や動画の閲覧は趣味の一環だと説明していた。
検察官「(29年6月に)『切り裂きジャック』との履歴がある。これが事件に関することを初めて調べた」
被告「もっと前から高校生ぐらいから」
検察官「履歴に『サイコパス』ともある。サイコパス診断をしたことがあるのか」
被告「あります」
検察官「あなたは自身がサイコパスだと思っているのか」
被告「思わない」
検察官「サイコパス診断の結果は」
被告「覚えていない」
被告は淡々と検索履歴の説明を続ける。
「覚醒剤 過剰摂取」と検索
検察官「30年2月28日に『完全犯罪』と検索している。きっかけは」
被告「いや、ないし、ただ事件ものが好きだから調べた」
検察官「『老人 完全犯罪』と検索したときに野崎さんのことは思い浮かべたか」
被告「思い浮かべていないです」
検察官「全く?」
被告「はい」
被告はこれまでの審理で野崎さんに覚醒剤の購入を依頼され、同年4月上旬に密売人と接触したと説明。密売人と連絡を取ったその日に「覚醒剤 過剰摂取」と検索していた。
検察官「注文した量が過剰摂取か気になったのか」
被告「いや、思っていないです」
検察官「密売人への注文と検索は関係ない」
被告「直前に見ていた動画が薬物の大量摂取に関するものだったから、それが引っかかって見ただけ」
野崎さんの死因は急性覚醒剤中毒。被告の犯人性を見極める上で野崎さんと違法薬物に接点があったか否かは重要な焦点で、検察側の質問が続く。
検察官「なぜ購入依頼を断らなかった」
被告「私が使うわけではないから、お金をもらえればいいかなと」
検察官「覚醒剤を購入するのはリスクがある」
被告「うーん。使って体に残るならリスクがあるけど、頼まれる分には重く考えていなかった」
検察官「密売人と接触するのを重く考えていなかった」
被告「はい」
「死体を見たのが初めてだったから、びっくりした」
野崎さんの死亡が確認された直後の行動も取り上げられる。被告が野崎さんの異変について119番したのは同年5月24日午後10時35分ごろ。野崎さん宅に駆け付けた警察官らが帰ったのは翌午前2時ごろだった。
検察側によると、24日午後9時35分ごろの履歴の次は25日午前2時15分ごろ。「インスタグラム 一括削除」と検索していた。
検察官「なぜ」
被告「うーん。覚えていないです。この前からユーチューブでいろいろ見ています。検索が最初というだけで」
検察官「野崎さんが亡くなったときの感情は」
被告「悲しかったということですか。死体を見たのが初めてだったから、びっくりした」
検察官「喜怒哀楽でいえば」
被告「いや…どちらかといえば『無』ですかね」
「欲のせいで足元すくわれた」
被告は野崎さんの死亡後、友人にラインで「ぜんぜん財産もらうつもりだったよ。欲のせいで足元すくわれたけど」とメッセージを送っていた。
検察官「『足元』とは」
被告「遺産目的というかお金目当てに安易に結婚して、それをつっつかれてマスコミにいじめられている状況を言っている」
冒頭陳述によると、死亡後、被告は野崎さんが経営していた会社の代表取締役に就任。会社から約3800万円を受け取っている。この理由について被告は前回の公判で、当時委任していた弁護士に「役員報酬として月30万円ぐらいもらえないか」と相談したところ、弁護士から「3千万円入金できる」と言われたと説明していた。
検察官「月30万円を頼んだのに3千万円となった。もっと少なくてもいいという話にならなかったのか」
被告「もらえるものはもらう」
その後も被告は令和3年4月に逮捕されるまで計約6800万円の財産を取得したとされる。検察側はその金の用途を追及する。
検察官「大きな買い物で覚えているのは」
被告「ん…ん…。あっ車、買った」
記憶をたどるように、しばらく沈黙した末に回答した被告。買ったのは中古のポルシェで一度乗り換えたため計2台。2台目は500万円ほどで、1台目はそれよりは安かったという。さらに検察側から促される形で、ハーレーダビッドソンの高級バイクも1台買ったと明かす。
検察側は、質問の最後に改めて野崎さんの死をどのように捉えているかただす。
検察官「今となってはどのように思っているのか」
被告「ん…。目の前にいるなら文句を言ってやりたい」
11日から続いた検察側の質問がいったん終了した。
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