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袴田巌さん再審無罪 検察側、全面敗北 3つの捏造、検察官の関与も示唆

産経ニュース / 2024年9月26日 22時6分

九州大法科大学院の田淵浩二教授

昭和41年の静岡一家4人殺害事件で死刑が確定した袴田巌さん(88)に再審無罪を言い渡した26日の静岡地裁判決は、検察側の主要な証拠について捜査機関による「3つの捏造(ねつぞう)」に踏み込んだ。検察官が一部捏造を認識していた可能性も示唆。再審公判でも「袴田さんが犯人」との立場を崩さなかった検察側にとっては全面敗北に近い結果となった。

「非人道的」

地裁判決が捏造を認定したのは①袴田さんが自白した検察官調書②確定判決で犯行着衣とされた「5点の衣類」③袴田さんの実家で見つかった5点の衣類の端切れ-だ。いずれも「証拠にできない」として、排除した。

袴田さんの取り調べは43年の地裁判決が問題視し、警察と検察が作成した袴田さんの供述調書45通のうち44通を証拠から排除。ほかの証拠から死刑を言い渡している。

再審公判の地裁判決は、最後に残された検察官調書1通についても、警察と検察が連携し「非人道的な取り調べ」で自白を獲得したと認定し、証拠から排除した。

衣類も排除

検察側にとって最も痛手となったのは、再審公判で最大の争点となった5点の衣類を捏造証拠とされたことだ。

5点の衣類が現場近くのみそタンクで発見されたのは事件から約1年2カ月後の42年8月。袴田さんは41年8月に逮捕された。袴田さんが隠したとすれば、衣類は1年超、みそに漬けられていたことになる。問題は、衣類に付着した血痕に赤みが残っていたことだ。

再審公判への道を開いた昨年3月の東京高裁決定は、1年以上みそに漬けられていれば赤みは消失するはずだとして、捏造の疑いに言及した。

再審公判で検察側は「赤みが残りうる」と主張したが、地裁判決はタンク内の酸素濃度などが色に与える影響を検討。タンク内で衣類を1年以上みそ漬けすれば「血痕は赤みを失う」とした。

では、誰が衣類を隠したのか。地裁は、捜査機関が袴田さんの衣類を入手して隠すことも可能で「血痕を付着させるなど加工した捏造証拠」と認定。高裁決定の「疑い」よりも踏み込んだ。

地裁は、衣類の端切れも捜査機関が持ち込んだ可能性を指摘。端切れが押収された翌日の公判で検察官が冒頭陳述を訂正し、当初パジャマとしていた犯行着衣を5点の衣類に変更したことは、検察官が押収を事前に知っていたことを「推認させる」とまで言及した。(滝口亜希)

九州大法科大学院教授(刑事法)・田淵浩二氏の話

今回の静岡地裁判決は無罪の原因が捜査当局による証拠の捏造だと初めて明確に認定した判決で、画期的だ。

地裁は検察側の納得感も意識して約1年かけて丁寧な審理をしたといえる。地裁は最大の争点となった「5点の衣類」に関し、再審公判でも検察側に反証の機会を与えており、判決は検察側の主張を科学的に検証した上で捏造と認定している。

判決は、別の論点では弁護側の主張を退けており、検察、弁護側の主張について慎重に評価したといえる。

検察側が控訴する可能性について裁判長が言及したが、再審公判で検察側に十分に論証する機会を与えた上での判決であり、控訴は論外だ。国民の理解も得られないだろう。

救済にここまで長期間かかった再審無罪事件はなく、異常だ。

原因は再審の規定がある刑事訴訟法の不備にある。再審請求の手続きを明文化し、証拠開示のルールも作るべきだ。政府は今回の事件をきっかけに刑訴法を改正しなければ、今後、改正の機会を失うだろう。

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