中学受験塾とスポーツ少年団の何が違う 親の期待とバックアップは比例しない 桜井信一 桜井信一の攻める中学受験
産経ニュース / 2024年9月21日 10時0分
子どもを育てるという役割、とても大変だとつくづく思います。中学受験塾に通う子どもたちの親は40歳前後から40代半ばの方が多いでしょうか。この年齢は、親自身の人生においても重要なことが多いように思います。仕事で重責を担っている最中の方もいるでしょうし、今からやりたいことに挑戦するという方もいるでしょう。
そんな時に子どもが中学受験と言われても、これは塾に任せるしか仕方がない。あるお母さんが「小学校の宿題で国語の音読があるでしょ。あのサインすらしてやる時間がない」というのです。そりゃ時間はあるのでしょうけれど、バタバタしていてそれどころではない。落ち着いた時間が流れる毎日ではないということをおっしゃりたいのでしょう。
でも不思議に思いませんか。小学生がスポーツをしている場合、わかりやすい例が「スポーツ少年団」ですが、たくさんの親がお手伝いをしていますし、練習中は見学もしています。夜の小学校の体育館で剣道をしているところを覗いてみても、お父さん、お母さんが練習を見学しています。少年野球も同じ。頻繁に行われる練習試合の車出しは、みんなで協力してこなしています。かなりの時間と手間暇がかかるのにそれが出来ているのです。
当然、同じように40歳前後から40代半ばの親たちが頑張っているのです。何が違うのでしょうか。
中学受験生の親といえば、「算数はよくわからないから」が決めゼリフ。でも、剣道も野球もよくわからないはず。昔、剣道を習っていたという親は算数も習っていたはずなのです。もっというと、中学受験を経験している親もいるくらいです。子どものスポーツは付き合えるけれど、勉強は付き合えない。スポーツの見学時間は割けるけど、勉強を見てやる時間はない。この違いは何でしょうか。
「塾」という存在が、何もかも任せて大丈夫。親は送迎だけでも充分頑張っているというのが常識になっているからでしょう。その結果どういうことが起きているでしょうか。 入塾した時の志望校とは程遠い、ボリュームゾーンに停滞したまま月日だけが流れます。
一方で、スポーツより勉強の方が重要だと考えている親は多いのではないでしょうか。スポーツで平均的な成績の子に対して、怒りに任せて罵ることはあまりないでしょう。ところが、送迎だけしかしていない勉強で平均に停滞すると親子でバトルを繰り返します。期待する方と期待される方の意識レベルが相当乖離しているはずです。
私自身小1から小6まで硬式少年野球をやっていました。まるで才能がなく、才能がないものを教えるコーチの存在もなく、学ぶツールもない状態のなかで当然万年補欠でした。母は車出しこそしてくれなかったですが、チーム全体のためのお茶やおにぎりの当番はちゃんとやってくれました。また、試合もよく見にきてくれました。親がくれば代打くらいは出してくれるかもしれないと期待していたと思います。
そんな万年補欠の私に「ずっと補欠でどうするの!情けない!」なんて怒鳴ることはありませんでした。まあこんなものかという感覚で親子関係に影響が出たりはしませんでした。
スポーツって、時間を割いてくれるわりに期待が小さいのです。ひょっとしてという意識レベルなのです。よく考えるとそれが妥当。私が甲子園に行ってプロ野球選手になるなんて奇跡は起きないとわかっているわけですから。
その点、勉強は門戸が広い。スポーツや音楽、芸術に比べて明らかに入り口が広く敷居が低い。さらに、勉強はその先の人生設計を描きやすい。そんな勉強にせめてスポ少と同じだけは時間を割いてあげてほしいと思います。
親にも自分の人生がある。また、生活を成り立たせるための責任もある。しかし、塾に預けられたままでは、何をどうしていいかわからないまま立ち尽くしている子どもがいます。その子はきっといま以上の場所に行く可能性があります。じっくり見学してみたらその意外な能力に驚くはずです。
筆者紹介
桜井信一(さくらい・しんいち) 昭和43年生まれ。中卒の両親のもとで育ち、自らも中卒になる。進学塾では娘の下剋上は難しいと判断、一念発起して小5の勉強からやり直し、娘のために「親塾」を決意。最難関中学を二人三脚で目指した結果、自身も劇的に算数や国語ができるようになる。現在は中学受験ブログ「父娘の記念受験」を主宰、有料オンライン講義「下剋上受験塾」を配信中。著書に、テレビドラマ化されたベストセラー『下剋上受験』をはじめ、『桜井さん、うちの子受かりますか』、馬淵教室と共著の『下剋上算数』『下剋上算数難関編』などがある。
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