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『[新版]日本人の歴史哲学』著者の政治学者・岩田温氏 「戦没者の追悼は国民国家の礎」

産経ニュース / 2024年8月14日 7時0分

政治学者の岩田温氏=8月2日午後、東京・大手町(寺河内美奈撮影)

ユーチューバー・政治学者として活動する保守派の論客、岩田温さん(40)が学生時代に手掛けたデビュー作『[新版]日本人の歴史哲学 なぜ彼らは立ち上がったのか』(産経新聞出版)が20年ぶりに復刊された。79回目の終戦記念日を前に、インタビューに応じた岩田さんは大東亜戦争で祖国の繁栄を願って散華した特攻隊員たちに思いをはせた上で、「歴史との断絶が顕著な現在の日本人は、過去・現在・未来と続く垂直的共同体の中で生きているという自覚を取り戻すべきだ」と指摘した。主な一問一答は以下の通り。

--約20年ぶりに復刊された『[新版]日本人の歴史哲学』を改めて読み直しての感想は

「基本的に、歴史と哲学と国家というものに重要な関係があるという認識は当時から全く変わっていない。多くの歴史学者は歴史だけを、哲学者は哲学だけを、政治学者は政治だけを論じる。しかし今の日本で本当に求められているのは、歴史と哲学と政治を組み合わせて論じることだ。そういう観点から書かれたものは本書しかない。粗削りな部分もあるとはいえ、最も愛着のある一冊です」

--早稲田大学の学生時代に本書を刊行しているが、そのきっかけは

「平成16年に開催した靖国神社での出陣学徒慰霊祭で、記念講演をお願いした哲学者の長谷川三千子埼玉大教授(現在は名誉教授)から『慰霊祭を行うことは非常に素晴らしいが、それだけではお弔い団体になってしまう。若いエネルギーを十分に使い切ってほしい』と指摘していただいた。死者を悼む行為は当然だが、若いうちからそれだけやっていては祖国の繁栄を願った特攻隊員たちの〝後に続く〟ことにはならない。若くして散華された特攻隊員たちの精神、日本人の歴史哲学とは何かを徹底的に勉強しました。それをまとめたのがこの本です」

--本書では、時間を超えた垂直的共同体としての国家の歴史をみつめ、それを背負い、自らもそこに連なっていくという覚悟こそが日本人の歴史哲学だ-と指摘している。具体的には、西南戦争に立ち上がった西郷隆盛と大東亜戦争に命を懸けた特攻隊員の言葉と行動を通じて日本人の歴史哲学を考察している

「中学生のときに評論家・江藤淳の本をよく読んでいたが、一番印象に残ったのが『南洲残影』だった。なぜ西郷は西南戦争に立ち上がったのか。それは負けるとわかっていても後世に歴史を刻むという意味もある、といったことが書かれていて、大事なメッセージだと思った。そういう歴史を持つ民族と持たない民族とでは団結の度合いが全然違う。歴史の記憶こそが国民国家を成り立たせる求心力だと学びました」

「先日、政治学者の高坂正堯の本を読んでいたら、20世紀初頭にオランダ統治下のインドネシア・バリ島であった地元王族の集団自殺による抵抗の話が出てきた。この集団自殺事件はオランダ側を驚愕させ、島古来の社会システムを守る防衛的役割を果たしたといい、他者からは合理的な精神に欠けているとみられるものが実は歴史を動かすことがある、と。(自殺的な戦闘行為である)特攻隊の作戦もそういう文脈で見られることがあるとリアリストの高坂が書いており、非常に印象的でした」

「何かのために命を差し出すということはなかなかできない。でも、そこまでして国を守ろうとした人がいる国と、自分さえ生き残ればいいんだという国民しかいない国とでは、独立に対する思いが違ってくる。ある種のやせ我慢ではあるけれど、世界の独立国家はそういう思いをもってやっている。戦後日本もそういう思いでやってきたはずなのに、いつの間にか忘れてしまっている」

--本書では垂直的共同体としての国家を表徴する存在として靖国神社もテーマの一つだ。靖国神社を巡っては今年7月、神社の石柱にスプレーで落書きした中国人が逮捕される事案もあった

「スプレー事件のようなことが他国であったら、その国の国民は激怒する。しかし、日本では一部の人は激怒したが、それ以外は『大したことはない』という態度だった。そもそも政府はなぜ中国に強硬な抗議をしなかったのか。他の国では戦没者の追悼や施設を蔑(ないがし)ろにしたら、国民国家の礎が崩れる。それを汚されても『大したことはない』『自分たちは損したわけじゃない』といふうに思っていること自体が腐敗している証だ」

--戦後の日本社会は連合国軍総司令部(GHQ)の工作により、垂直的共同体としての国家意識を喪失し、それは今なお続いている。どうすればその国家意識を取り戻すことができるのか

「一番は教育だろう。中学校でどんなに立派なことを学んでも、高校や大学で真っ赤に染められたら意味がない。もっと言うと、もう少し大学というアカデミズムの世界が健全なものにならないといけない。例えば、私の知り合いの大学教員が打ち合わせの席で、『わが国の歴史を振り返った時に…』と言った瞬間、周りの研究者から『わが国』という表現を口にしたことに驚かれ、反発のアレルギーがあったという。日本の大学教員の間では日本を突き放し、自分と関係がないというスタンスが知的だと思い込んでいるフシがある。逆に、愛国心を持っているのは野蛮人だと考えられる。こうした風潮が存在する限り、ろくな国にはならない。大学の教員が変わるしかないが、国家のことを真剣に考える教員はほとんどいない。国家のことを真剣に考える私は絶滅寸前のトキみたいな存在だが、アカデミズム界の〝赤い巨塔〟を変えるために今後も闘っていく覚悟です」

いわた・あつし 昭和58年、静岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒、同大学院修士課程修了。現在、一般社団法人日本学術機構代表理事。専攻は政治哲学。著書は『後に続くを信ず』(かや書房)など多数。ユーチューブで「岩田温チャンネル」を配信中。産経新聞や夕刊フジに定期的にコラムを寄稿している。

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