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亡き義母から継いだ使命感を筆に 21世紀国際書展韓国大使館韓国文化院賞の北川雅翠さん

産経ニュース / 2024年7月4日 12時57分

第39回21世紀国際書展の韓国大使館韓国文化院賞に輝いた北川雅翠さん

7月10日に開幕する「第39回21世紀国際書展」(主催・産経新聞社、21世紀国際書会)の授賞式を前に、特別大賞に選ばれた4人の横顔を紹介する。韓国大使館韓国文化院賞の北川雅翠さん(58)は決して書が好きではなかったという。それがいつしか無我夢中になり、書家としての道を歩み始めた。日本の書を、世界が認めるアートに。夢は膨らんでいる。

16年間離れていた書と向き合うことに

人生の分岐点は突然やってくる。「本当は好きで始めた書ではないんです」。義母の死によって、16年間も離れていた書と、30歳前に向き合うことになった。

小学生の6年間は習い事として続けた。書くことは好きだったが、中学生になると筆を置いた。その後は高校まで剣道を続け、出身の栃木県足利市の大会で個人戦で優勝。陸上の応援部員で駆り出されることもあった。運動神経は抜群。活発な青春時代を送った。

大学に進み、社会人になって夫と知り合い結婚。嫁いだ先の義母が、横浜市港南区の書道教室を主宰していた書家の北川翠泉だった。2児をもうけ、母親業を全うしていたころ、義母が急逝した。

残された書道教室をどうするのか。義母の弟子に加え、所属する新芸書道会の遠藤岑翠(きんすい)会長(当時)夫妻が並んだ話し合いは数時間に及んだ。「バックアップする」と言ってくれた2人を除き、厳しい言葉を発する複数の弟子たちに返す言葉はなかった。悔しかったが、泣きながら継ぐことを誓った。

ただ、遠藤夫妻をはじめ、教室に残った人たちのサポートに救われた。書は遠藤さんに師事し、5年間修行。子育てと両立しながらだったが、遠藤さん夫妻は「あなたのペースでやりなさい」「きっと子供たちが憧れる先生になる」と励ましてくれた。

契機となった書家の言葉

教室を始めて5年10年は無我夢中だった。何より、生徒の子供たちが成長していく様子に力をもらった。中には「書くのが嫌、もう書きたくない」と言っていたのに、27歳になって続けてくれる男性もいた。教え、育てることに充実感があった。

それでも書くことは楽しくなれなかったという。そして、2つ目の分岐点がやってくる。

展覧会で自身の書の前にいた際、ある年配の書家に声を掛けられたのを契機に、書を好きになれない悩みを吐き出した。「あなたが(書に)真剣に向き合わなければ、生徒さんは付いてこないよ」。そう諭されてハッとした。生徒たちの思い、亡き義母から受け取った使命感を思い出せてくれた。

朝の家事を終え、午前8時30分ごろから道具を出して、好きな音楽をかけながら書き始める。休日を除き、毎日約3時間、筆をとる。一方で、教室があるときは、子供たちとワイワイガヤガヤと。1人1人の成長を確かめながら、楽しく過ごす。韓国など海外に旅行に行くこともある。そうやってメリハリをつけた結果、書と向き合える自分を見つけた。

「アート的なものに挑戦も」

今回の作品は、中国・唐の詩人、杜甫の詩で、友人としばらくぶりに会った喜びとともに、また別れなければならない複雑な心情が伝わる内容。新型コロナウイルス禍の際の社会と通じるものを感じて書きあげた。

書の基礎を大事にし、古典を十分に勉強して書くことを基本にしながら、「アート的なものにも挑戦したい」という。書は、世界の人たちに認めてもらえる万国共通の芸術だと考えているからだ。

人との出会いは、行く道を大きく変える。その大切さを胸に日々、筆をとる。(大谷卓)

きたがわ・がすい 昭和41年4月14日生まれ。栃木県足利市出身。書道を始めたのは小学生から。子供の時は剣道、陸上などに取り組み、現在も週2回はジムに通う。義母の北川翠泉さん(故人)の教室を受け継ぎ、新芸書道会の遠藤岑翠さん(故人)に師事。21世紀国際書展の会長賞(公募)、国際賞などの受賞歴がある。

21世紀国際書展は10~14日、横浜市民ギャラリー(横浜市西区宮崎町)で開催される。入場無料。午前10時から午後6時まで(最終日は午後4時まで)。JR桜木町駅前から無料送迎車によるサービスがある。問い合わせは同ギャラリー(045・315・2828)。

授賞式・祝賀会は13日、「HOTEL PLUMM」(同市西区北幸)で行われる。

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