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「安堂さんはツイています」「実力は間違いないが…」第172回芥川・直木賞講評

産経ニュース / 2025年1月29日 7時0分

第172回芥川賞・直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が15日、東京・築地の料亭「新喜楽」で開かれ、芥川賞は安堂ホセさん(30)の「DTOPIA(デートピア)」(文芸秋季号)と、鈴木結生(ゆうい)さん(23)の「ゲーテはすべてを言った」(小説トリッパー秋季号)に、直木賞は伊与原新(しん)さん(52)の「藍を継ぐ海」(新潮社)にそれぞれ決まった。選考会での講評を紹介する。

芥川賞 最も過剰な作品2つ

「最も過剰な2つが受賞という形になった。勢いのある2人の受賞に選考委員一同喜んでいます」

講評を担当した島田雅彦選考委員によれば、最初の投票で鈴木作品が一番の高得点となったが、議論を重ね安堂作品の評価も変化。2回目の投票で過半数に達して2作受賞となり、「安堂さんはツイています」と語った。

安堂作品は恋愛リアリティーショーを通し、暴力やジェンダーなどの問題を描く。「テーマてんこ盛りの過剰さ」のなかで、「カラードやセクシュアルマイノリティーへの差別や偏見という過去作品からも通底するテーマが逐一のエピソードにしっかり落とし込まれ、キャラの作り方、ディテールも魅力的」と評した。

鈴木作品は、研究者が文豪・ゲーテの言葉の原典を探す物語。「非常に若く、新たな書き手の登場」と選考委員の注目ぶりも伝えた上で、「ゲーテにまつわるペダントリー(知識の誇示)の過剰さも大したもんだと。ゲーテの著作の森に迷い込みながら、謎解きもあり、登場人物がしっかり動いている」と述べた。

他の候補作では、乗代雄介さん(38)の「二十四五」(群像12月号)が「実質3位」。登場人物の関係性が「イマイチ曖昧」とされ、5回目の落選となったが、「芥川賞なんか関係ないというような強い自信とスタンスを維持されていくと信じます」とエールも。

永方(ながえ)佑樹さん(年齢非公表)の「字滑り」(文学界10月号)は言葉が乱れる現象を扱い、描写力や叙情は評価されるも「表層的な分析、解釈に留まっているのではないか」との意見も出た。竹中優子さん(42)の「ダンス」(新潮11月号)は、職場の人間関係をユーモアを交えて描いたが、「積極的に推す方は極めて少なかった」と選に漏れた。

直木賞 自然と悩み共存の妙

約3時間の選考。角田光代選考委員が議論の経過を説明した。1次投票で伊与原さんの作品と荻堂顕さん(30)の「飽くなき地景」(KADOKAWA)、月村了衛さん(61)の「虚の伽藍」(新潮社)の3作が残り、2作受賞か、突出した高得点を獲得していた伊与原作品の1作かを議論。その上で単独受賞を決めたという。

受賞作は、地方で継承されてきた人々の営みを科学の視点を通して物語る短編集。科学的要素が単なる科学的なネタにはなっていないという評価が多く、角田委員自身としても「歴史や科学のような人智の及ばない大きなものを書きながら、私たちの小ささを対峙させるのではなく、私たちの小さな悩みを自然と同じくらい大きなものとして共存させた姿勢がすばらしい」とたたえた。

角田委員によると、荻堂作品と月村作品はいずれも強い支持と不支持が混在した。荻堂作品は旧家に生まれた主人公が一族経営の建設会社の光と影を見つめた一代記。ほぼ全ての委員が「実力は間違いない」と評価したが、「どうしても納得できない部分がある」という意見があった。月村作品は仏僧が闇社会に翻弄され金と権力を追い求める姿を描いている。「主人公のサイコパス的なありようが面白い」という声の一方、「既視感がある」などの声もあり、評価が分かれた。

高齢者の読書サークルを舞台とする朝倉かすみさん(64)の「よむよむかたる」(文芸春秋)は「安定感があり、心温まる小説で気持ちよく読んだ」という声が多かった。江戸中期の徳島藩で起きたお家騒動を題材にした木下昌輝さん(50)の「秘色(ひそく)の契り」(徳間書店)は「面白く読んだ」という声が多かったが、両作とも委員の支持は広がらなかった。

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