世界文化賞受賞者ら懇談会 戦争と災害、高まる芸術の存在感「共感する力取り戻す」
産経ニュース / 2024年11月18日 20時8分
18日、東京・虎ノ門のオークラ東京で行われたた第35回世界文化賞受賞者らの合同記者会見。その後に個別懇談会が開かれ、5人は受賞と創作への思いなどを語った。
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日本滞在中の失恋の痛みを表現した「限局性激痛」で知られる絵画部門のソフィ・カルさんは、「40年前に私から離れた彼が、数年前に世界文化賞を受賞している」と明かし、「彼は私が同じ賞を取れたことにむかついていると思う」とエスプリを効かせて語った。また、「私の作品は他の4人と比べ政治色が薄いかもしれないが、女性の作品であること自体が政治的側面を持つ」とした。
暴力の被害者をモチーフとしてきた彫刻部門のドリス・サルセドさんは、「芸術は人の命を取り戻せないが、犠牲者の尊厳を取り戻すことはできる。なくなったものに形を与えることが芸術の意味だ」。現在は戦争で破壊された民家を題材に制作中で、「家を持つのは最低限の権利。人の痛みに背を向けるのではなく、共感する力を取り戻さなければ」と語った。
再生紙の紙管という独創的な素材で作品を生み出してきた建築部門の坂茂さんは、「今でもお金をもらって金持ちの住宅を造る一方で、仮設住宅を無料で造っている。それは対立するものではなく、仕事という点でいえば(自分の中で)両方、差がなくなっている。どちらも仕事の満足感は変わらない」と、建築設計と災害支援の両立についての考えを披露した。
音楽部門のマリア・ジョアン・ピレシュさんは、混乱する世界情勢で「演奏家はもっと社会と関わるべきだ」という持論を展開した。「目の前の聴衆しか見ていない演奏家があまりにも多い。コンサート会場を出て、戦争や紛争に苦しんでいる人々が大勢いる現実を直視し、そうした問題に抵抗を試みるべきだ。演奏とは、社会から学び続けて初めて成熟するものだから」
芸術性と娯楽性を両立させた映画で評価される演劇・映像部門のアン・リーさんは、「私のDNAの中に組み込まれていることだと思うが、芸術のためだけに作るというわけではなく、人気を博すためにだけ作るのでもない。常にその2つの世界観の良いとこ取りをして、それができるという立場にあったということも幸運だと思う」と自身の創作を説明した。
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