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<朝晴れエッセー>ドクターイエローからの贈り物

産経ニュース / 2024年6月27日 5時0分

ドクターイエロー引退。夕飯の支度をしながら、テレビから聞こえてきたそれに、手元が止まった。

8年前、初めての子供を死産した。小さな箱に収まったわが子を膝に乗せ産院を出た。運転席には夫。助手席に私。お互い何もしゃべらなかった。私たちは自分たちの身に起きたことを受け入れられずに、放心していた。

途中、新幹線の線路と並行する国道がある。そこに差し掛かったとき、目に飛び込んできたドクターイエロー。私はハッとしたのと同時に膝の上の箱を窓に近づけていた。

「見える? ドクターイエローだよ」

明日には火葬されるわが子に唯一してやれた親らしいこと。一緒に見られてよかった。天国で自慢するんだよ。そうつぶやいているうちに、ドクターイエローは過ぎ去ってしまった。

見ると幸せになれると聞くが本当だろうか。また子供産めるかな。隣で黙り込む夫とこの先やっていけるのかな。涙があふれ嗚咽(おえつ)していた。

その後、私たちは、休んだり、迷ったりしながら、少しずつ前を向くことができた。ドクターイエローのおかげかどうかはわからないが、2人の息子にも恵まれた。今は騒がしく、にぎやかな毎日を送っている。引退のニュースはさまざまな気持ちをよみがえらせた。引退までに、ぜひ子供たちともう一度見てみたいものだ。

小川雅子(45) 滋賀県草津市

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