＜朝晴れエッセー＞偶然の再会

その日午後からは車で所要があり、午前の仕事が終わると職場をあとにした。しかし、途中で大渋滞に巻き込まれ、到着は普段の倍以上の時間がかかった。案の定、約束には遅刻。先方に遅れる旨は伝えていたが、落ち着かぬまま要件をこなし、身も心も疲れ果てて帰路に着いた。

淀川にかかる橋を渡り、川を越えると東海道新幹線の高架に差し掛かった。時折、走行中の新幹線と遭遇することがあり、そんなときは鉄道好きの私にとってなんだか得した気分になる場所である。今回も新幹線が通らないかな？　と思っていると、全身に衝撃が走った。なんとドクターイエローが通過したのである！

この目で見たのは人生で2度目。1度目は10年以上前で妻とドライブ中だった。一瞬の出来事で「あれってドクターイエロー…？」程度の全く実感のないものであった。これが悔やまれ、次にチャンスがあればこの目に焼き付けてやる、といつも心に決めていた。

そのかいあってか、今回は先頭から最後尾まではっきりと眺めることができたのだ！　老朽化を理由に引退するというニュースを聞いたので、偶然の再会はより感慨深いものであった。見ると幸せになるという新幹線のお医者さん。これまでの疲れは噓のように消え、心地よいドライブに変わっていた。

梅村茂雄（49）　兵庫県西宮市