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<朝晴れエッセー>叔父の老眼鏡

産経ニュース / 2024年12月22日 5時0分

私が現在使っている老眼鏡は、叔父の遺品である。父方の叔母のつれ合いは、10年くらい前に亡くなった。叔父を慕っていた私は、何か身につけていた遺品を所望した。もらったときは、度が強すぎて、まるっきり役に立たず、本箱にオブジェのように飾ってあった。

何代目かの老眼鏡が合わなくなり、叔父の老眼鏡をかけてみると、あら不思議、新聞も小説の本も、よく読める。

眼鏡ケースには、叔父の近所の眼鏡屋の住所なども書いてある。叔父らしく、自分の目に合う、高価な眼鏡を買ったと思われる。店員さんとの会話が聞こえてくるような気がする。「おシャレな眼鏡やのう。頭まで良うなったような気ィするわ」と、冗談交じりにおどけている叔父の姿が想像される。

高校、大学と野球をしていて、体格の良かった叔父だが、眼鏡のサイズは私にピッタリ。「叔父さん、おはよう」「叔父さん、こんにちは」と、私は眼鏡をかける。

今も、叔父の眼鏡をかけている。文章まで、すらすら書けるような気がする。叔母に手紙やはがきを書くときも、そうである。「えっちゃん、(叔母と)仲良くしてやってくれや」という叔父の声を思い出しながら。

涌井悦子(69) 新潟県長岡市

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