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<朝晴れエッセー>適材適職

産経ニュース / 2024年6月9日 5時0分

60歳を過ぎて古本業を始めた。白手袋をはめるような希少本の扱いはない。昭和の懐かしい本が中心だ。

いくつになっても学ぶことはある。本は巻いてある帯だけでなく、挟んである著者目録、宣伝の栞までそろって完本となる。

昭和中ごろ刊行の名著復刻版は、紙から装丁まで当時をそっくり真似た凝った作りだ。外箱から出すと、ページがすべて二つ折りに製本されている。断裁ミスと思いきや、そうではない。

アンカット版という。明治の読書人はペーパーナイフでページを切り離しながら、読む楽しさをゆっくりと味わったのだ。画面に映る文章を捨てるように指でタップする現代人には、忘れ去られたゆとりである。

仕入れは古書組合の古本市、ネットから。近ごろは昭和レトロがはやりとか、古絵葉書や昔のおもちゃなど雑貨の扱いも増えている。

店舗は構えず、新刊書店の棚を借りての販売。書店の減少や若者の本離れが騒がれるなか、新しい試みといえるだろう。

若い頃には古本業なんて思いもしなかった。なろうと思ってなったわけでもない。転職を重ねた果てに、本好きがたどり着いた最後の仕事。そういうことである。

松本豊(68) 埼玉県三芳町

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