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際を極める、その先を見据えて 産経国際書会 勝田晃拓 〈書の力〉

産経ニュース / 2024年11月4日 8時0分

字画内外の「白」を独立させる際(きわ)の変化技で、字は浮き出てくる=勝田晃拓書「谷川俊太郎の詩『世代』から」

書作中に書法の全種類を把握できるツリー図を眺め、ふと思うことがある。そう、書の世界はそんなに甘くない。

ツリー図最上段にある「書法」の下位には、「筆法」「筆勢」「筆意」がそれぞれ横に並び、さらに下位へ枝が左、右、下へ延びていく。「筆法」の下位にある「運筆」「執筆」「墨法」の項目だけでも、ゆうに200を超えてしまう。

もちろん自身が手掛けている(と錯覚する?)領域は氷山の一角だ。残る膨大な項目の塊を前にそれを踏破することは容易ではない。古典から何を学び、栄養素としているか疑問符が付く自身の未熟さに気づかされるのだ。

さて、世の秩序あるものは、放っておくと無秩序に向かうという。この物理学の法則「エントロピー(無秩序の度合い)増大」が書作にも当てはまるらしい。

例えば、水に墨を垂らすとやがて全体が黒く染まり、決して元の水に戻せない。服に付いた墨も然り。書作も失敗のまま続けると無秩序が残るというわけだ。

これを秩序ある状態(エントロピー低減)である美の域へ変換させることが肝要となる。私はツリー図を俯瞰しながら、手間暇をかけ、美のエレメントを発掘する作業の大切さを実感した。

エントロピー低減に真っ先に結び付くのは、「(書いた)黒」と対峙する「(書かない)白」。すなわち「余白の美」=「際(きわ)の秩序」を意識することが成功のカギだろう。これに力を注ぐ自分がいる。

苦労の末に手書き作品を完成させた喜びは生成AIに分かるまい。字を書き、作品が生まれる。その先に何があるのかをしっかりと見据えたい。(産経国際書会副理事長 勝田晃拓)

産経国際書会は「書道」のユネスコ無形文化遺産登録を推進しています。

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