心に残る故郷の「少年の日」を描く 栃木県佐野市の画家、安藤勇寿さん(73) 令和人国記
産経ニュース / 2025年2月9日 9時50分
色鉛筆を使って独特の柔らかいタッチで少年時代の心の風景を描き続ける栃木県佐野市の画家、安藤勇寿さん(73)。「少年の日」を生涯のテーマに季節の移ろいや暮らし、昔ながらの行事などを少年のような心と目線で描く作品は、どこかぬくもりを感じさせてくれる。安藤さんが大切にしている心に残る貴い美しい風景とは…。作品への思いを聞いた。
校長先生の一言が
31歳の頃から、「少年の日」をテーマに、心に残る風景や暮らしを描いてきました。そして平成14年に故郷に長年の大きな夢であった安藤勇寿「少年の日」美術館を開館することができました。
生家は山あいにある美術館から、さらに奥に行った山の中です。子供の頃は木登りをしたり川で魚を捕ったり。山里が遊び場でした。父親は農業をしながらセメント会社でも働き、家族の暮らしを支えてくれました。
私は子供のころから絵を描くのが好きで、小学1年のときには絵画コンクールで賞をいただき、校長先生が全校生徒の前で褒めてくれました。褒められた喜びが自信になってますます絵が好きになり気が付けば、画家への道に導かれていました。校長先生が褒めてくれた一言が、私の人生を変える出来事だったかもしれません。
デザインから挿絵
当時の田舎では長男が家を継ぐものでした。私も長男ですから中学を卒業したら就職して家を継ごうと考えていましたが、中学の進路指導で担任から宇都宮市の高校に美術学科が新しくでき絵を学べることを知り、絵の勉強をしたい一心で進学しました。母親はしぶしぶでしたが父親は何もいわず、進学を許してくれました。高校は遠くて通えず寮生活でしたが、油絵や日本画、水彩画はもちろん、写真や仏像、建築など、いろいろ学ぶことができました。
高校卒業後は東京都内の美術専門学校に進み、卒業後は大手デザイン会社に就職。広告のデザインを担当しましたが、当時の私は自信過剰で職場の仲間とけんかばかり。どの職場でも仕事が長続きせず、10カ所以上を転々と。どの会社でも人とぶつかって続かない。そこで自分だけでできる挿絵の仕事を始めました。最初はつてを頼って仕事をもらい、教科書、純文学、スポーツ紙などジャンルを問わずひたすら約13年間、挿絵の仕事に打ち込みました。
「自分探し」の末に
ただあるとき挿絵を描いていて「どれが自分の絵といえるのか」「自分は何を描きたいのか」と考えるようになりました。30歳のときです。仕事先や家族から1年間の時間をもらい、挿絵の仕事から離れ、自分探しを始めました。その中で今の「少年の日」のテーマのもとになるものが見つかりました。
散った桜の花びらに彩られた校庭、蛍が飛び交う夏の夜、台所に立つ母親の姿…。楽しいこと、苦しいことなど今の感情を絵という形で表現しようとするとき、浮かんでくるのはいつも、少年時代の風景でした。人の感情はほとんどが子供のとき、さまざまな経験の中で育ちます。単に少年時代を振り返り作品にしているわけではなく、今描きたい感情イコール少年だったわけです。
挿絵時代にはいろんな画材を使ってきましたが、この絵を描くようになってからは色鉛筆だけです。繊細さが自分にはしっくりきました。これまで「少年の日」をテーマに描いた作品は1千点以上に。国内外の展覧会や画集出版、カレンダーやポスター制作など、さまざまな仕事を手掛け、平成19年には島田洋七さん著「佐賀のがばいばあちゃん」の絵本も担当させていただきました。
この「少年の日」の絵を描いていると、ただ見ているだけでは気づかなかったこと、心にも目があるんだなあと。これからも自分が今表現したい大切なものを描いていきたいと思います。(聞き手 伊沢利幸)
安藤勇寿
あんどう・ゆうじ 昭和26年、栃木県佐野市(旧田沼町)生まれ。平成4年「第18回現代童画会展」新人賞を受賞。以後、各賞を受賞。平成14年、故郷に『安藤勇寿「少年の日」美術館』を開館。同15年、田沼町「町民栄誉章」を受章。絵本「佐賀のがばいばあちゃん」の絵、映画「那須少年記」のポスター絵などを担当した。
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