飛鳥宮跡の最大建物跡、天武天皇の「御窟殿」か 病気平癒を祈った場と名大教授見解
産経ニュース / 2024年11月29日 11時4分
飛鳥時代の首都、飛鳥宮跡(奈良県明日香村)で発掘された最大の建物跡について、天武天皇(在位673~86年)の飛鳥浄御原宮(きよみはらのみや)に設けられた「御窟殿(みむろのとの)」との見解を名古屋大の鶴見泰寿(やすとし)教授(歴史考古学)が示した。日本書紀では、御窟殿は芸に秀でた人への褒美の授与や、天武天皇の病気平癒の祈禱(きとう)が行われた場所と記述。鶴見さんは「天皇の私的空間の中でも重要で、今回の建物が一番の候補になる」としており、謎の多い飛鳥の宮殿研究に弾みがつきそうだ。
建物跡は、奈良県立橿原考古学研究所の調査で東西35・4メートル、南北15メートルであると分かり、これまで最大とされていた「エビノコ大殿」(東西29・2メートル、南北15・3メートル)を上回ることが確定。ただし、最大の建物にもかかわらず宮殿中枢の「内郭」の外側にあり、用途については研究者も首をかしげる。
鶴見さんが着目したのは、日本書紀の天武朝に当たる朱鳥(あかみとり)元(686)年の項に記された御窟殿。「天武の時代に初めて登場する建物で、御窟殿は『御室殿(みむろのとの)』を示すことから天皇の住まいに関わる施設。今回の建物跡も、天武の時代に築かれたことから御窟殿と考えられる」と指摘する。
日本書紀では、天武天皇が亡くなる1カ月あまり前の朱鳥元年7月28日の出来事として「仏道を修行する者から70人を選んで得度させ、宮中の『御窟院』で斎会(さいえ)を設けた」と記され、御窟殿を中心とした「院」という空間があったことがうかがえる。今回の建物跡の南側でも別の建物跡が見つかっており、鶴見さんは「院に相当する空間があったとみていい」とする。
飛鳥浄御原宮は、内郭の南半分が儀式の際に重臣らが居並ぶ場とされ、「建物跡が見つかった内郭北側は臣下から最も遠い位置にあり、天皇のプライベート空間にふさわしい」と話す。
今回の建物跡について、鶴見さんにはひときわ思い入れがある。かつて橿考研に在籍し、平成21年度に担当した発掘で柱穴を検出して初めて存在を明らかにし、最大規模の建物の可能性をいち早く指摘した。
調査は吉野川分水の改修工事に伴うもので、幅6メートルほどの細長い水路部分しか発掘できなかったが、柱穴の間隔や位置関係から建物規模を復元。今回の調査で復元通りの建物だったことが確認された。
「15年前に発掘したが、飛鳥宮跡の内郭より外側なので、本格的な発掘が行われる機会はもうないと思っていた」と鶴見さん。「こうして目の前で巨大な建物跡を見ることができるとは。今回の調査成果によって飛鳥宮の研究がさらに進むだろう」と語った。
◇
現地説明会は30日、12月1日の午前10時~午後3時。近鉄・橿原神宮前駅から東約3キロ。周辺に駐車場はない。(小畑三秋)
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