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「書いた分は裏切らない」 イメージ大切に創作 21世紀国際書展グランプリの片岡竹彩さん

産経ニュース / 2024年6月27日 16時0分

受賞作品

7月10日に開幕する「第39回21世紀国際書展」(主催・産経新聞社、21世紀国際書会)の授賞式を前に、特別大賞に選ばれた4人の横顔を紹介する。グランプリに輝いた片岡竹彩さん(69)が大切にするのは作品の下準備にあたるイメージだ。「書いた分は裏切らない」。基本を大切にする姿勢が受賞に結びついた。

字に思い乗せる

作品をどうイメージするか。それは芸術家にとってもっとも大事なことだろう。書家にとっても同じだ。構図や文字の太さ、大きさ、そして墨の濃淡。選んだ詩や字の意味に、作者が感じ取った思いをのせる作業ともいえる。

「今回の作品はまず詩が気に入ったんですね。『人生は短いから、いまを一生懸命遊びましょう』という古詩です。でも、書こうと思った時に、ただずらずらと書くのでは面白くないと。構図を考えるのに時間がかかりましたね」

「生年不満百」から始まる詩の一つ一つの字を調べ、鉛筆を使った下書きに取り掛かった。最初に書いたものから一つ一つの字の形、太さ、大きさを変えたり、中心をずらしてみたりして、時間を掛けて数パターンの下書きを仕上げた。

そこから、実際に筆で書くイメージをさらに磨いた。例えば、筆の使い方。どう返すのか。細さを魅せるのか。太さを強調するのか。それぞれが同じ調子にならないよう変化と遊びを入れた。しっかりとした下準備を経て、題材を見つけて2カ月弱で作品を仕上げた。

「(イメージを整えてからは)そんなに長い期間を掛けていません。書けば書くほど、逆に整ってしまうので」

教えは忠実に

幼いころから、書が身近にあった。平成8年度には川崎市文化賞を受賞したこともある父、中川竹泰(ちくたい)が主宰する書道教室で「兄と姉と一緒になって幼稚園ぐらいからやっていて、気が付いたら全部の字が書けていた」。高校時代に一時、書から離れたものの、大学に入って教員免許を取得する際に、再び書と向き合った。「そこで初めて書の勉強の仕方を習った。そして改めて父の作品を見ると、こんなにも美しい字を書いていたのかと驚いた」という。

大学時代、手本を基に書いていると、恩師によく言われたことがある。「これと手本は一緒か」「似て非なるものだな」。筆遣いや墨の使い方を学んでいること、つまり書の基本を身に付けていなければ、手本通りには書けない。作品をイメージし、創造力を働かせて創作するためには、確かな礎が必要なのだ。

創意工夫で独自の世界へ

「守破離(しゅはり)」は芸道、武道などで使われる言葉で、教えを忠実に守り習得した上で、次に自ら考えて工夫し、独自の新しい世界を生み出すという考え方だ。

「書でも、まず真似(まね)ること、たくさん書くことは大事。書いた分は裏切らない。真似るがゆえに勢いがなくなることもある。大きな壁があるけれども、そこを飛び出すこと。その先に創作がある。人の成長も同じじゃないでしょうか」

いま魅了されているのは、中国・南宋の書家、張即之(ちょう・そくし)(1186~1266)の作品。2年前に東京都内で公開された京都・智積(ちしゃく)院にある国宝、「金剛経(こんごうきょう)」を実際にみたとき、圧倒された。実は金剛経を、父が亡くなる前に書いていたことも知り、「これから書いていきたい」と意を決した。いまが書家としての全てではない。高みはまだ先にある。理想への挑戦は続いている。=随時掲載

かたおか・ちくさい 昭和29年7月22日生まれ。川崎市幸区出身。書道は父、中川竹泰(故人)の影響で「物心ついたころから」始めたという。川崎市内の書道教室を主宰。趣味は旅行。特に京都巡りが好きで、昨年だけでも6、7回訪れた。「京都好き」が高じて京都検定2級を持つほどの腕前に。

21世紀国際書展は7月10~14日、横浜市民ギャラリー(横浜市西区宮崎町)で開催される。入場無料。午前10時から午後6時まで(最終日は午後4時まで)。JR桜木町駅前から無料送迎車によるサービスがある。問い合わせは同ギャラリー(045・315・2828)。

授賞式・祝賀会は7月13日、「HOTEL PLUMM」(同市西区北幸)で行われる。

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