「引き込まれる『オモロイ純文学』、伝えていければ」 芥川賞の松永K三蔵さん一問一答
産経ニュース / 2024年7月17日 23時15分
「バリ山行」で第171回芥川賞を受賞した松永K三蔵さん(44)が17日夜、東京都内で記者会見に臨み、受賞の喜びを語った。主なやりとりは次の通り。
--受賞が決まった今の気持ちは
「大変光栄です。ただ感謝、感謝の気持ちです。純文学といいますと、とっつきにくかったり難しいというイメージをお持ちの方もいるかもしれませんが、今回私が書きました『バリ山行』は登山の小説でして、純文学になじみのない方も読みやすいのかなと思います。ぜひ面白い純文学もあるんだなということで、読んでいただければ」
--(候補入りしたときに)「普段の仕事で住民説明会でマイクを持つことがある。それより緊張するかも」とおっしゃっていましたが、今の緊張具合は
「大変緊張しております。普段以上です」
--純文学だが読みやすいものを心がけたということが評価された。その受け止めと、改めてご自身の中での「オモロイ純文学」についての思いは
「純文学というものは何かということはよく議論されるんですけれども、必ずしも難解である必要はない。読みやすく、とっつきやすいというのも入り口だと。どんな方にも読みやすく、引き込まれるような小説を、というのは思っています」
--受賞が決まって家族などの反応は
「父に電話したんですけれども出ず、メールをしたんですけど返ってこずでした。しばらくたってから返ってきたんですけど。あとは妻が喜んでくれました」
--今回の作品の中で書きたかったものは
「私が書きたいものはやはり、ままならなさ。社会であったり、世界であったり、ままならなさの中でいかに生きていくか。個人の挑戦のようなものと、葛藤ですね」
--この先も会社員の仕事は続けるのか
「働きながら書くという生活なんですけれども、やはり働く中で私自身も吸収することも多くありましたので、働きながら書いていきたいと思います」
--ファッションについて。帽子はいつ作った?
「デビューしたころですので、2021年ごろに作りました。ネットで特注で。サイクルキャップなんですけれども」
--純文学の作家は芥川はじめいろんな方がいる。好きな作家や作品は
「現代の作家でも、平野啓一郎先生とか川上未映子先生とか、純文学の装いを持ちながらも、非常に物語性のある面白い作品を書かれている。やはり開かれた純文学ということを感じております」
--本を買ってほしいという気持ちは強い
「そうですね。多くの方に届いてほしいというのがありまして。純文学はいろんな形があります。いろんな面白さがあると思うんですけれども、まず私のは分かりやすいと思いますので、入門編といいますか、それをきっかけにいろんな純文学の魅力を知ってほしい」
--どういう関心で登山というテーマを選んだ
「私も日常的に山歩きをするんですけれども、そういった中でちょっと着想を得まして、小説になるんじゃないかなということで書きました」
--小説を書いていく中で、山の風景や会社の風景が変わって見えたりは
「会社はあまり変わらないんですけれども、山の風景は普段歩いている中でも、自然と描写を頭の中でしてしまっていました」
--「松永K三蔵」はペンネーム?
「ペンネームです」
--「K」の意味は
「Kはミドルネームなんですけど、私の家族のファーストネームにKが多かったので、みんなからもらってつけております」
--街中にお気に入りの場所や風景は
「屋上で眺めがいいようなところ。仕事で登る屋上は好きですね」
--ホームページに「実はメガデスよりもパンテラが好き」とあるが、今はどちらが聞きたい気分か
「パンテラです。パンテラがヘビーメタルでは一番好きです」
--(住んでいる)兵庫県や西宮市の良さは
「本当に阪神間というのは、海と山に挟まれて東西に長い街です。ちょっと歩けば海が見えて、北を見上げれば山があるというところで、私自身育った地域ですので。作中の中でもありますけど、日常と非日常がもしかしたらすごく近い地域なのかなと思っております」
--山を歩く時間はどういう時間か
「一番リラックスできる時間だと思います。一人で散歩しながらなんですけれども、小説の構想を練ったり、私生活のいろいろなことを考えたり、自分の中でちょっと整理できるような時間です」
--茨城県出身者が芥川賞を受賞するのは初めて。茨城県民にメッセージを
「ペンネームの三蔵というのは、茨城出身の祖父の名前です。私の育ちは阪神間ですけれども、毎年夏には茨城の方に帰っておりました。非常に思い入れが強い地域です。ちょっと落ち着けば行きたいなと思っておりますので、その際は茨城の方にお会いしたいなと思います」
--受賞をどういう転換点にしたい
「書くことは変わらないのですけれども、やはり書く幅を広げて、より人間、また世界への問いを深めて、面白い純文学を書いていきたいと思います」
--最後に一言
「私は2021年にデビューして以来、一人で『オモロイ純文運動』を行ってきております。開かれた純文学、面白い純文学を多くの人に伝えていければなと思っております。ぜひこの『バリ山行』を読んでいただいて、面白い純文学がどういうものかを見ていただければと思います」
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