1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. カルチャー

<朝晴れエッセー>大和の茶粥「おかいさん」

産経ニュース / 2024年8月17日 5時0分

中学を卒業するまで茶粥で育った。私の田舎、奈良の東吉野では茶粥のことを「おかいさん」といった。

祖母が茶粥をつくる70年以上前のシーンをよく覚えている。かまどに鍋を置き、ちゃん袋(茶袋)に入れた番茶で米を煮、木の杓子(しゃくし)ですくっては落として吹きこぼれを防ぎ、出来上がるまでそばを離れなかった。絶品の茶粥の味は大阪市出身の今は亡き母が受け継いだ。

2020年7月、胃に進行性のがんが見つかり「ステージ4、余命6カ月」の告知を受けた。胃の3分の2を切除する手術と抗がん剤で激やせとなり、ご飯やトーストが喉を通らない。

そんなとき、宇陀市に住む妹が鍋いっぱいの3代目「おかいさん」を持ってきてくれた。がんとの闘いは、朝1杯のニンジンジュースと茶粥の朝食からはじまった。

4年たった今も生かされ、穏やかな余生を過ごすことができているのは、何のおかげなのだろうか。がんに打ち勝つ人の特性に、体力・気力・食事力・娯楽力などがあって、諦めない気持ちを持っているかどうかだという。

私の場合、医療の進歩と妻の献身が大きかったのだろうが、負けない気持ちの部分と食に対する執念、「おかいさん」のおかげも大きいのだろう。

松場弘人(79) 奈良県橿原市

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください