露中朝の脅威…核兵器取り巻く世界情勢は急速に悪化 「人類史上最も危険な時期」
産経ニュース / 2024年10月11日 21時24分
【ニューヨーク=平田雄介】日本原水爆被害者団体協議会(被団協)にノーベル平和賞が授与されるのは、核兵器を取り巻く世界情勢が急速に悪化していることの裏返しだ。ロシアは核兵器を使用するとの威嚇を繰り返し、中国は核戦力を急速に増強、北朝鮮も非核化交渉に応じない姿勢をみせる。スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)は6月公表の年次報告書で「人類史上最も危険な時期の一つにいる」と警鐘を鳴らしていた。
核軍縮外交が弱体化
報告書によると、世界の核軍縮を巡る外交は、ロシアのウクライナ侵略やパレスチナ自治区ガザでの戦闘を機に弱体化した。ロシアは、昨年2月に米露間の新戦略兵器削減条約(新START)の履行停止を一方的に表明。今年5月には侵略するウクライナとの国境近くで戦術核の演習を行った。中東危機をめぐっても、イランが支援する勢力が米軍が駐留する基地などを攻撃し、イランの核開発を防ぐための交渉環境は厳しくなっている。
報告書は、核拡散防止条約(NPT)が定める核兵器保有5カ国(米英仏露中)で唯一、兵器用核分裂性物質(FM)生産のモラトリアム(一時停止)を宣言していない中国について、「他のどの国よりも速いペースで核戦力を強化している」と指摘。10年後までに米露と同じ数の大陸間弾道ミサイル(ICBM)を保有する可能性があると分析した。
報告書はまた、北朝鮮が複数の核弾頭を射出できる弾道ミサイルの開発を進めていると指摘。北朝鮮代表は先月の国連総会で、核保有を「自衛のため」と正当化し、核・ミサイル開発で「決して誰とも取引しない」と非核化交渉への復帰を拒む姿勢をみせた。
核戦力の均衡を意識
日本は唯一の被爆国として、米英仏など友好国とともに高濃縮ウランなどの核分裂性物質の生産を禁止し、核兵器の数量増加を制限する「兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)」交渉の早期開始を目指す。
ただ、ウクライナ戦争で連携する露中朝イランが核の脅威を高めているのを受け、日本の同盟国・米国は核戦力の均衡を意識せざるを得なくなっている。米国家安全保障会議(NSC)で軍縮・不拡散を担当するバディ上級部長は今年6月、米軍備管理協会の年次総会で「数年以内に戦略核の配備拡大を余儀なくされる局面が来るかもしれない」と講演し、危機感を示した。
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