印象派の知られざる魅力紹介 「印象派 モネからアメリカへ」展、あべのハルカス美術館で 美へのまなざし
産経ニュース / 2024年11月4日 7時0分
印象派の絵画がフランスからどのように世界へと伝播したかをたどる「印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵」(産経新聞社など主催)が、大阪市阿倍野区のあべのハルカス美術館で開かれている。鮮やかな色彩や屋外の明るい光を自由な筆致で表現したことで、西洋絵画の中でも人気の高い印象派。日本初公開の作品も多く、知られざる魅力を味わうことのできる展覧会だ。
ルネサンス期以降に確立された近世の西洋絵画は、聖書や神話をテーマに遠近法や陰影を使ってリアルに描くことが旨とされた。印象派は連綿と続いてきたその歴史を革新した美術様式だ。屋内で筆跡を残さぬよう理想のテーマを重厚に描いたそれまでの絵画は、彼らによって明るい屋外に持ち出され、光を表現するための粗い筆触で身近な風景や暮らしが描かれ始めた。
1874年に第1回が開かれた印象派展から150年。この展覧会は、その印象派が欧州を越え、米国や日本を含む世界に及ぼした影響を、19世紀末に米ボストン近郊で開館したウスター美術館が当初から積極的に集めてきた印象派の所蔵品を中心に眺めてゆくものだ。
展示は「伝統への挑戦」「パリと印象派の画家たち」「国際的な広がり」「アメリカの印象派」「まだ見ぬ景色を求めて」の5章からなっている。
最初の章はコローやクールベら印象派誕生前夜の画家たちの作品を紹介し、第2章はモネの「睡蓮」をはじめ、ルノワールやピサロらの優品が並ぶ。
第3章はフランスで外光派のコランに学んだ黒田清輝やベルギーで印象派を学んだ太田喜二郎ら日本人の作品を含む、留学者たちが浴びた印象派の影響を追い、第4章ではフランスから印象派の技法を持ち帰ったハッサムらの作品で、米国での広がりを振り返ってゆく。そして、最終章ではセザンヌやシニャックらポスト印象派、新印象派らの作品までを紹介している。
印象派といえばパリが本場。その意味では、米国や日本は印象派にとっての辺境で、フランス以外の欧州の国々であっても地方という扱いになってしまう。
しかし、この展覧会でそれぞれの作品をフラットにながめていると、留学先のフランスで本場の印象派に比肩する力量を身に付けた画家は、米国などにも確かに存在したのだということを理解できるはずだ。
あべのハルカス美術館の浅野秀剛館長は「美術史で、中央と地方という分け方をすることがあり、印象派でいえばパリが中央、ドイツや米国は地方ということになる。しかし、美術にとっては、そうした分け方よりも作品自体にどれほど魅力が付加されていて、どれくらい人の心を打つかの方が大切。ぜひ作品の前に立って、これは好きだな、という絵を探してほしい」と話す。
会期は来年1月5日まで。観覧料は一般2千円ほか。問い合わせは同館(06・4399・9050)。(正木利和)
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