古墳時代の青銅鏡、大量生産の謎 橿考研で実態解明へ再現実験
産経ニュース / 2024年7月12日 10時52分
権威の象徴として古墳に副葬された青銅鏡について、大量生産に向けた製造方法を再現する実験を奈良県橿原市の県立橿原考古学研究所が行い、成果を紹介する企画展が同研究所1階アトリウムで開かれている。粘土で作った鋳型や未完成品、製作途中の写真などを展示。古墳時代の青銅鏡の鋳型は国内で見つかっておらず、実態が分かっていない青銅鏡生産を知る上で興味深い内容となっている。23日まで。
古墳時代中期末~後期(5世紀後半~6世紀)の青銅鏡生産は、モデルとなる1枚の鏡「原鏡(げんきょう)」を粘土に押し付けて型を取り、同じ形の鋳型を複数製作して新たな青銅鏡を作る「踏み返し技法」によって大量生産したと推定されている。
古墳出土の青銅鏡では同じ文様のものが複数見つかっており、この技法が使われたとされる。ただし、文様が同じでも直径が数ミリほど小さいものがあり、踏み返しを重ねることで鋳型の粘土が収縮して小さくなったと考えられてきた。そのため、直径が小さい青銅鏡は時期が新しいとされ、古墳の築造時期を絞り込む手掛かりにもなっている。
橿考研は、直径の違いが製作時期の差を示すかどうかなど青銅鏡生産の実態を探るため、鋳型作りから実験で再現した。その結果、鋳型を作る際に原鏡を粘土に押し付けて1時間ほどで抜き取ると、鋳型が4~5ミリ収縮した一方で、抜き取るまでの時間を長くすると収縮率が小さくなることが判明。青銅鏡の直径の違いは時期差を反映するとは限らないことが分かり、従来の説に一石を投じた。
水野敏典・資料課長は「青銅鏡が小さくなるのは、鋳型を作る際に粘土から原鏡を抜き取る時間や粘土の量など製造工程に関係し、共通した鏡作り集団がいたことを示すのではないか」と話した。企画展は平日のみで無料。
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