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<朝晴れエッセー>言葉探し

産経ニュース / 2024年10月10日 5時0分

友人が亡くなって2年になる。

当時彼女はがんが進行し、医師から、残された家族が困らないよう準備しておくように、と告げられた。

彼女には母親と小学生の息子がいた。

母親に、遺影を撮りに行きたい、と言って「縁起でもない、そんなこと言わないで、絶対に治るから」と泣きながら怒られたこと、エンディングノートを書き始めたこと、でも抗がん剤治療を続けたいこと、たくさん話を聞いた。

「話を聞いてもらうと少し楽になる」

彼女はいつもそう言った。そしてその後に、「こんな話ばかりでごめんね」と言う。

私は次第に、耳を傾けるだけではダメだ、何か気の利いた返事をしなくては、と考えるようになってしまった。そうして出てくる言葉は、私の本当の言葉ではなく、繕った言葉になっていたかもしれない。

時折、彼女の家にお邪魔して、お母さんとお茶を飲む。息子君は、宿題を広げたままゲームに夢中だ。遺影の中の彼女は優しくほほ笑んでいる。

宮田裕子(54) 京都府舞鶴市

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