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<朝晴れエッセー>お盆の風

産経ニュース / 2024年8月27日 5時0分

丹後の山寺の住職を拝命して20年近くになる。地元の人口は3割以上減少し、高齢化と過疎化が進行している。新型コロナ以降は仏事も簡素化し、昔のような法事や葬儀ができないことも多い。お寺の行く末も厳しいものがある。それでも檀家(だんか)さんの多くがお寺への思いを持ち続けておられるのはありがたいことである。

お盆の棚経では一軒ずつ檀家さんの家を回る。小学生の頃、私が行くと、笑顔で迎えてくれた人たちも多くが鬼籍に入られた。子供の私が読経しているときにうちわであおいで風を送ってもらったことが懐かしい。はるか昔から自分が大勢の方に見守られてきたことを感じる。

お盆は立秋と重なる。暦の上では秋である。昔とは比べものにならない猛暑であるが、大汗をかきながら檀家さんの家を回っているときに、ふと風の中に秋を感じることがある。川辺を歩くと赤とんぼがしきりに飛び始めている。たまに都会に行くとまことに便利で快適だが、自然に囲まれ、穏やかな人々とともに暮らしてくことが実に得難く思えている。

今年は先代住職である父の七回忌にあたる。父は多分、お盆の風の中に今もいるし、自分もいつかこのお盆の風に形を変えて吹き渡ってゆくのだろうと思う。

松尾義空(59) 京都府舞鶴市

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