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手紙の不思議 拙さも個性、胸を張って一歩を 〈書の力〉

産経ニュース / 2024年8月26日 9時0分

国宝「風信帖」東寺蔵

古(いにしえ)より手紙は、老若男女を問わず、自分の思いや用件を直接的・間接的に伝えるための効果的手段です。時に歴史、文学、美術、宗教などの重要資料として価値も生じます。

2例を挙げます。中国・東晋の書家で書聖と称される王羲之の尺牘(せきとく、手紙のこと)と、真言宗開祖・空海が天台宗開祖・最澄に宛てた手紙「風信帖」です。

まず王羲之の尺牘。内容は多岐にわたり、政治、孫娘、自身の病気、友人…と親近感を覚えます。豊富な知識や教養も備え、貴族の矜持がうかがえます。一方、「風信帖」。5通のうち3通が現存し、書は道を極めた崇高な精神に溢れ、中国風の中に和風の萌芽を見てとれます。

両者の手紙は書を学ぶ際の必須の書ですが、手紙は王侯、貴族、高僧だけのものではありません。市井の人の手紙にも心打たれるものがあります。黄熱病ワクチンを開発した野口英世の母シカの手紙です。

シカは研究で渡米した英世に「はやくきてくれ」「いっしょのたのみてあります」「ねむれません」…。拙ない文と文字で、全身全霊をかけて表現され、子を思う母の情念が伝わってきます。

手書きの手紙には、書き手の息遣いや温度感などが凝縮され、真意が伝わりやすい。不思議な力です。活字では真意は伝わり難いものです。拙文、拙筆を恥じて文字を書くことを忌避する現状がありますが、拙なさを個性として胸を張っての一歩を。手紙を待っている人は必ずいるはずです。(産経国際書会理事長 高橋照弘)

産経国際書会は「書道」のユネスコ無形文化遺産登録を推進しています。

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