＜朝晴れエッセー＞2分間の内緒話

毎朝娘の髪を結んでいる。娘は小学4年生、つい最近10歳になった。七五三に向けて髪を伸ばしたりしていた時期もあったが、今は頑張っている柔道で邪魔にならないようにと肩より上の長さにし、前髪をひとつに結んで根元を隙間からうしろにくるりと返すスタイルが定着した。なんでも柔道教室にいた当時中学生の強いお姉ちゃんへの憧れから、同じヘアスタイルをまねするようになったらしい。不器用な私には三つ編みや編み込みをお願いされるより断然ありがたい。

とかして寝癖を直してクリームをつけて例のくるりんぱを作るまで時間にして2分弱。小学校の話、好きなアイドルの話、兄や弟の文句、柔道の試合が近づくと緊張や弱音もポロリと口にする。私はただうんうんと聞き役に徹する。その日の娘の機嫌も自然と分かる。

2分後、くるりんぱが出来上がると髪も気持ちも満足した娘は「ありがとー」と言ってランドセルを背負う。

娘の頭が私のおなかあたりにあった頃は真下を向いて結んでいたが、胸のあたりになったと思えばあっという間に目の前に頭がある。もう少ししたら私が背伸びして結ぶ日がくるかもしれない。いつまで結ばせてくれるか分からないが、「髪の毛やろー」と言ってくれる間は結んであげたい。もう自分で上手に結べることも知ってるけどね。

片渕康子（41）　兵庫県西宮市