＜朝晴れエッセー＞新年のおまじない

私は新年の目標を、日記を兼ねた手帳の最初のページに書くことにしている。目標というよりモットー、生活の指針、よりどころといったところか。いってみれば、おまじないのようなものかもしれない。

今年のそれは、「ていねいに生きる」であった。昨年急になくなった、大切な兄を思いつつ、自然に浮かんできた言葉である。昨年は「淡々と　日々新たに!!」、一昨年は「感謝!　感謝!」。「八回深呼吸　八回深呼吸!」や、「怒らない　怒らない!!」という年もある。短気で怒りっぽい私の性格を反映したもので、言葉を2回重ね、しかも感嘆符まで付けている。

年初はまだ意識している目標も、月日がたつに連れてすぐに忘れてしまう。思わず手帳の最初のページを見て、あそうだった!と思うのが常である。

このように三日坊主のようなおまじないなのに、なぜわざわざその年の目標を作るのだろう？　自問自答したが、頭の片隅のどこかで無意識のうちにそのおまじないが私にささやいてくれているのではないかとも思う。それが最晩年期を迎えている私の人生を少しでも、前向きに、豊かにしてくれているのではないか。

さて、今年も年の瀬が迫ってきた。なくてもいいような三日坊主のおまじないではあるが、そろそろ来年の目標を考えることにしよう。

坂本茂樹（78）　兵庫県西宮市