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<朝晴れエッセー>祖父のホタルかご

産経ニュース / 2024年8月11日 5時0分

私が子供の頃、夏になると、農業を営む高知の祖父がホタルを虫かごに入れて送ってくれた。今と違い、便利な宅配便があるわけではない。発送してから私の手元に届くまで早くて2日かかっていたのではないか。

受け取ると死んでしまったホタルも何匹かいたが、光を放つ元気な個体に、私は無邪気に喜んだ。虫かごには杉の葉が詰めてあり、ただでさえ命が短いホタルが1日でも、1時間でも長く生き、私に光を見せられるように工夫がしてあった。

小学校が休みになると帰省して、顔を合わせる。母が一人娘だったこともあり、その一人息子の私を、ことのほか大切にしてくれた。しかし、田舎の堅苦しい習慣が分かる年ごろになると、私は帰省を拒否するようになり、祖父や母を困らせた。

その祖父が逝って28年になる。母も3年前に祖父の元へ旅立った。私の今の住まいの近くの公園ではホタルの観賞会が開かれ、ヘイケボタルを見ることができる。あの虫かごに入っていたのは、同じヘイケボタルだったのだろうか。

祖父は私のためにどうやってホタルを捕ってくれたのだろう。今となっては確かめることはできないが毎年、夏になると、思いが募る。

松下保彦(57) 奈良市

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