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地中の魅力分かってほしい 世界遺産国内推薦候補「飛鳥・藤原」地元が知恵絞る

産経ニュース / 2024年9月12日 20時13分

紙で作った仮面をかぶって伎楽の所作を体験する児童たち=6月、奈良県明日香村の明日香小学校

令和8年の世界文化遺産登録を目指す「飛鳥・藤原の宮都」(奈良県明日香村、橿原市、桜井市)が国内推薦候補に選ばれた。平成19年の世界遺産暫定リスト入りから17年。ようやく国内のハードルをクリアし、「世界」が見えてきた。ただ、現地に足を運んでものどかな田園風景が広がるばかりで、飛鳥時代の宮殿遺跡は地下に埋もれて全く見えない。極東の島国で繰り広げられたダイナミックな国造りのストーリーをいかに世界に理解してもらうか。地元ではさまざまに知恵を絞っている。

「東アジアの古代国家形成期において中央集権体制が誕生・成立した過程を、2つの宮都の変遷から示す唯一無二の資産」。9日に開かれた国の文化審議会は「飛鳥・藤原」の歴史的価値をこう評した。

7世紀後半、中国の政治制度や文化、技術を積極的に導入して天皇中心の国家の礎が築かれた。飛鳥宮(明日香村)に続いて、現在の省庁にあたる国家機関を備えた藤原宮(橿原市)が首都として整備された。

積極的な大陸外交を展開し、飛鳥宮では天皇の代替わりごとに宮が築かれた状況が発掘を通じて明らかになった。飛鳥時代に詳しい木下正史・東京学芸大名誉教授(考古学)は「国や県、地元による60年以上に及ぶ緻密な調査研究が途切れることなく行われたからこそ、一連の歴史的意義が証明できた」と話す。

6世紀後半以降、遣隋使や遣唐使を通じて交流が盛んになったが、7世紀後半には唐の勢力拡大によって事態は緊迫化。倭国は唐・新羅(しらぎ)との「白村江(はくそんこう)の戦い」(663年)で大敗し、大陸の脅威が現実味を帯びてきた。

激動する東アジア情勢に対応して強靱(きょうじん)な国造りを目指したのが、天皇を頂点とした中央集権体制。周辺の大国との熾烈(しれつ)な駆け引きなど、壮大な国家戦略のストーリーをたどれるのが飛鳥・藤原の遺跡群といえる。

■価値の「見える化」

地下の遺跡は、どれほど大発見でも発掘が終われば保存のため埋め戻される。

「『地面の下にあって何も見えない』というのは以前からの課題。歴史的意義や魅力を知ってもらうのは容易ではない」と話すのは、明日香村教育委員会文化財課の小池香津江課長。世界遺産となれば、日本の古代史に詳しくない海外の人にも分かるような説明が求められる。

「それぞれの遺跡の特性にあった説明の仕方が必要。また、すべての資産を巡ることで全体の価値を分かってもらう工夫が欠かせない」と小池さん。飛鳥宮跡や山田寺跡(桜井市)などでは、現地でスマートフォンやタブレットをかざすと当時の復元建物が映し出されるVR(仮想現実)映像を導入。近くに資料館が設けられた遺跡もあり、出土遺物を見ることでイメージが浮かぶよう趣向を凝らす。

橿原市観光協会の松井昌宏事務局長は「飛鳥宮から藤原宮へ都が遷(うつ)った歴史が分かるような観光ルートを考えたい」と話す。

■日常で守ってきた

「日本の原風景」といわれる飛鳥。小池さんは「村の人たちは、歴史遺産や風土を先祖が残してくれた貴重な財産として大切にしてきた。日々の暮らしの中で守ることが当たり前になっていて、本当にすごいこと。こうした取り組みを世界に発信していきたい」

村では、飛鳥時代に大陸から伝わった仮面劇「伎楽(ぎがく)」を子供たちが体験し、再現に取り組む。10月20日には村文化祭で発表も予定。ユーモラスな伎楽面や音楽など、中国や中央アジアを含めたユーラシア大陸の要素が詰まっている。

「世界遺産は遺跡のイメージが強いが、伎楽の音や踊りを通じて当時の国際交流を五感で知ってもらえる。さまざまなチャンネルからアプローチできるのが飛鳥の魅力」と語った。(小畑三秋)

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