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〝伝わる瞬間〟に思いを込めて 「現代の名工」に選出の秋田の花火師、今野義和さん(60) 地域で輝く

産経ニュース / 2025年1月2日 11時0分

尺玉を手にする今野義和さん=秋田県大仙市(八並朋昌撮影)

全国花火競技大会「大曲の花火」の地元花火師として、旋律に乗せて打ち上げる「音楽花火」や大空にキャラクターを描く「型物花火」など革新的な花火制作に取り組み、令和6年度の「現代の名工」に選ばれた。

「花火には〝伝わる瞬間〟がある。花火師が深い思いを込めた作品は、大空で火薬が爆発したエネルギーが芸術作品に変換して、観客の心と体を震わせる」

昭和59年の大曲の花火では、交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」を伴奏にした。「音楽で花火の印象をより高めようと、カセットテープを古いスピーカーで流した。全国の競技花火で初の試みで、翌年から音楽花火が増え続けた」

同時に、ふるさとを象徴する「麦わら帽子」を皮切りに、東日本大震災後には帰らぬ人を思う「カエル」など、さまざまなイメージやキャラクターを大空に描く型物花火を制作してきた。

音楽花火は、豪華な音響装置とコンピューター制御で緻密に音楽とシンクロするまで進化したが、その第一人者である自身は顔を曇らせる。

「複雑な打ち上げプログラムの入力に追われ、一発の花火に思いを込めるヒマがない。ショーとしては素晴らしいが、心にボッカリと感動が残らない」

そして、「夜空で開いた花火が瞳に映り、光のエネルギーがそのまま身体に吸い込まれて、思わずため息をつく。思いが伝わった瞬間だ。こんな力を持つ芸術作品をつくる喜びを、名工の称号に恥じぬよう伝えていきたい」と言葉に力を込めた。(八並朋昌)

■こんの・よしかず 昭和39年、秋田県大仙市の今野煙火製作所の4代目として生まれる。福井工業大で火薬を研究し、在学中から家業に携わる。平成2年に北日本花火興業として会社化し、21年に社長就任。国内外で打ち上げを続け、受賞は数えきれない。花火師の「現代の名工」選出は通算10人目。

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