1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

脳を知る 認知症?それとも年齢相応? 過剰に心配しないで

産経ニュース / 2025年1月8日 7時0分

認知症を心配される高齢者とその家族が増えているようです。高齢でも身体的に元気な人の割合が増えているからでしょうか。物忘れ外来を受診される理由で最も多いのが「最近もの忘れが多くなってきたけれど、これは認知症なのか? それとも老化による物忘れで年齢相応なのか?」といったものです。

そもそも認知症とはどういう病気なのでしょうか? 国際疾患分類(ICD10)によると認知症とは「慢性あるいは進行性の脳疾患によって生じ、記憶、思考、見当識、理解、計算、学習、言語、判断など多数の高次脳機能の障害からなる症候群」と定義されています。続いて「いったん正常に発達した知能が後天的な器質的脳障害によって低下し、日常、社会生活が営めない状態」とあります。つまり認知症とは何らかの脳の病気、例えばアルツハイマー病や脳卒中など、によりさまざまな脳の機能が低下している状態で、それまでの通常の生活が営めなくなった状態、ということになります。

ここで注意したいのは、記憶という脳の機能はその他の多くの脳機能のなかの一つにすぎず、記憶が低下しているからといって認知症とは限らず、ましてやこれまで通りの生活ができているのであれば、なおさら認知症とは診断されないということです。

またMRIで脳萎縮があれば認知症、と思われていることが多いようです。MRI撮影後、認知症はありませんか?とよく質問されますが、MRIだけで認知症がわかれば苦労しません。MRIは脳萎縮も含めさまざまな脳疾患の有無を確認するために撮影していますが、認知症かどうかはその他の検査も含めて総合的に診断します。

それでは物忘れはどうして起こるのでしょうか? 脳の働きは1千億個以上の神経細胞のネットワークでできています。記憶の中でも近時記憶といわれるつい先ほどの記憶は、このネットワークの中に一時的に保持されます。ところが脳の老化で神経細胞ネットワークが少なくなると、記憶の保持ができなくなります。これが老化による物忘れの正体です。つまり記憶の予備能力が低下しているということであり、身体に例えると走ったり跳んだりといった運動予備能力が低下しているのと同じことです。多くの高齢者は自分が昔のように全力疾走できなくなっていることは受け入れているのに、ちょっとした物忘れだけは気にする、ということになります。

コロナや地震、台風など不安になる報道が多い昨今、認知症に関しても同様ですが、あまり過剰に心配せずに過ごしたいものです。

(済生会和歌山病院副院長兼脳神経外科部長 小倉光博)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください