乳がんⅠ期の手術は、乳房温存の部分切除か全摘か 再発リスクに違いはあるのか? がん電話相談から
産経ニュース / 2024年7月23日 9時0分
今回の「がん電話相談」は、Ⅰ期の乳がんで、乳房の部分切除か全摘か手術の選択に悩む50代女性の相談に、がん研有明病院の乳腺センター長で乳腺外科部長、上野貴之医師が答えます。
──今年3月、CT検査で右乳房に影が見られ、針生検などの結果、1.5センチのがん腫瘍1個が判明。ホルモン受容体陽性、HER2陰性で、(がん細胞増殖の活発さを示す)Ki67値は低く、組織学的グレードは1で低リスクの乳がんと診断されました。
「医師の治療方針は?」
──乳房の部分切除(温存)術か全摘術か、どちらを希望するかを決めてくださいと言われ、決められず迷っています。
「結論から言いますと、治療効果はどちらも一緒です。違いがあるとすれば、温存術の場合、術後に必ず放射線治療を行うことです。部分切除と放射線照射をセットで行う治療法を『温存療法』と言います」
「部分切除でがん腫瘍の取り残しを防ぐため、術前のMRIなどの画像診断では、がんの広がりを正確に確認します。放射線治療は術後約1カ月から開始し、3~4週間、または5週間、毎日通院し照射します。その後も同じ乳房に新しいがんや再発の可能性があるため、もう片方の乳房を含めて年1回、マンモグラフィーを撮ることになります。手術でがんを取り切り、放射線をしっかり照射すれば、全摘術と治療効果は変わらず、どちらでも問題ありません」
──そうなんですね。
「放射線照射が嫌かどうか、あるいは乳房を残したいかなど、患者さん自身の意向で治療法を選択することになると思います」
──全摘術のほうが再発リスクは低いと思っていました。
「以前は乳房を温存することで、予後が悪くなるのではないかと考えられていましたが、最近はさまざまな研究がなされて、少なくとも、がん腫瘍を手術で取り切り、放射線をしっかり照射できていれば、局所再発(がんが最初にあった乳房での再発)を含めた再発のリスクが上がることは特にないといわれています。一方で、乳房をすべて取ったほうがスッキリするという患者さんも多いので、それぞれの考え方だと思います」
──温存術では乳房の変形は?
「温存術の場合、乳房は変形します。がんを完全に切り取り、乳房も変形なく残すのは難しいですが、最近は温存乳房の形をよりきれいにするための手術法や考え方が進んできています。全摘の場合、失われた乳房を形成手術で再建する方法があります。患者さんのおなかや太ももの脂肪組織を胸に移植する自家組織再建と、インプラント(シリコンのパック)を入れて人工乳房を作る方法です」
──医師から遺伝子検査も勧められました。
「がんの再発のしやすさ(再発リスク)を調べて、術後に抗がん剤(化学療法)が必要かどうかを判断するものだと思います」
──分かりました。温存でも全摘でも治療効果に差がないのも理解しました。
「効果に差がなく、どちらを治療に選んでも大丈夫なので、担当医も選んでくださいと言っているんだと思います。あとは自分の乳房を残しておきたいと思うのか。全部切除してスッキリしたいと思うか、その選択です」
◇
「がん電話相談」(がん研究会、アフラック、産経新聞社の協力)は毎週月~木曜日(祝日・振替休日を除く)午前11時~午後3時に実施しています。電話は03・5531・0110、03・5531・0133。相談はカウンセラーが無料で受け付けます。相談内容を医師が検討し、産経紙面やデジタル版に匿名で掲載されることがあります。個人情報は厳守します。
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