放送作家を引退、「自分の付加価値探して」50代から第2の人生 鈴木おさむさん
産経ニュース / 2024年11月19日 11時0分
人気番組「SMAP×SMAP」などを手掛けた鈴木おさむさん(52)は3月末、32年間続けた放送作家業を引退した。現在は若い起業家らのためのベンチャーファンド「スタートアップファクトリー」の代表を務める。40代から考えていた「50歳からの生き方」が転身を後押しした。
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「あれ、スイッチ入りにくいな」
40歳になってテレビ業界の人とあまりご飯に行かなくなりました。50代を見据えて、テレビの世界と違う人脈を作ろうと思ったからです。
映画『マルサの女』の伊丹十三さんは51歳で俳優から映画監督に転身し、笑福亭鶴瓶さんは50歳で今一度落語に向き合う人生を始めました。秋元康さんも47歳で作ったアイドルグループのAKB48がブレークまで3年ぐらいかかり、50代から人生が変わったと思う。「自分の好きな人はみんな50歳からもう1回生きている」と、40代から「50歳からの生き方」を考えていました。
「あれ、(自分の中の)スイッチ入りにくいな」。45、6歳のときです。20代からずっと一緒にやってきたSMAPが平成28年に解散して「SMAP×SMAP」も終わり、「このままやっていていいのかな」と思うようになりました。
仕事でイライラやモヤモヤが募っていた平成31年には、76歳の父ががんで亡くなりました。
ぽっかり穴が開いた感じに
放送作家の仕事の調子が良くなってきた25歳のとき、スポーツ用品店を経営する父の1億円の借金が発覚しました。売り上げが振るわなくなったことや僕の大学の学費のためでした。(社会問題になった)商工ローンの利子が年40%近い借金も含まれ、僕は寝ないでがむしゃらに働き、家族で7年かけ返済しました。
父は亡くなる2週間前、病室で重い体を起こして僕に「ごめん」と謝ってくれました。返済はしんどかったけど、おかげで頑張るモチベーションとなって放送作家としてたくさんの感動と興奮を味わうことができ、父には「本当に感謝している」と心から言いました。父の死もあって、放送作家として頑張るというスイッチが切れ、ぽっかり穴が開いた感じになり「50代でやめるのもいいんじゃないか」と考えるようになりました。
人生こそ最強のコンテンツ
19歳で放送作家になったとき、先輩たちに比べて「自分には付加価値が何もない」ということがコンプレックスでした。
でも振り返ると借金返済、(お笑い芸人の)大島(美幸)さんとの交際0日婚、育児のために1年休業、SMAPとの仕事…。これらはすべて自分の付加価値です。50代からの第2の人生も付加価値を探す旅を続け、ワクワクして生きたい。人生こそ最強のコンテンツですから。
(聞き手 斎藤浩)
鈴木おさむ
昭和47年生まれ。千葉県出身。19歳で放送作家デビューし、今年3月31日で放送作家業・脚本業を引退。妻でお笑い芸人の大島美幸さん(44)と長男、笑福(えふ)さん(9)の3人家族。男性不妊がテーマの小説『僕の種がない』など著書多数。
◇
11月19日は男性の健康や幸福に目を向ける国際男性デー。多様性の尊重が叫ばれる令和の時代、男性の生き方にも異なる角度から光が当たり始めている。病、夫婦関係、働き方、家族のあり方―。きっかけを得て価値観を転換し、人生を見つめ直した男性たちに話を聞きました。=おわり
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