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痛みの県民性 「蚊に噛まれた」っておかしい? 痛みの表現、我慢への耐性さまざま 痛み学入門講座

産経ニュース / 2025年1月4日 13時0分

痛みなどとして感じる何らかの刺激を受けたときの反応、表現の仕方が地域によって異なるのが面白い。この点に関して私が日頃から特に気になっていたのが、蚊に刺されたときの表現である。私は、蚊に「噛(か)まれた~」と口にしてしまうが、通じないことがある。「食われた~」とも言うが、これは失笑の対象となる。どうやら関西圏以外では「刺された」の方が通りが良いようだ。そこで今回は、それらの県民性について考えてみようと思う。

大手製薬会社、ファイザーの日本法人が実施したインターネットアンケート(平成29年、回答者8924人)の結果を紹介する。「長く続く痛みを感じている場合、我慢しますか?」との質問に対して「必ず我慢する」「だいたい我慢する」と答えた割合が最も多かったのは栃木で81・6%、愛媛78・8%、和歌山78・1%と続く。少なかったのは神奈川68・3%、静岡69・7%、埼玉69・8%であった。

同じく「長く続く痛みは治らないと諦めていますか?」との質問で「非常にそう思う」「ややそう思う」は、愛知が75・7%、鹿児島が74・6%、千葉が74・5%と多く、少なかったのは沖縄60・6%、大分61・9%、徳島62・1%の順であった。この結果を分析しても一定の傾向はみられないなあ。栃木県民が我慢強いといえるのかなあ?

では、痛みの表現方法はどうだろうか。一般的に痛みは擬音語、擬態語(オノマトペ)で表現することが多い。炎症による痛みであれば「ヒリヒリ」「ズキズキ」、一方で〝神経障害性疼痛〟(いわゆる神経痛)では「ピリピリ」「ビリビリ」が多い。

そこで、オノマトペによって痛みの原因を分類できないか、とする試みが医学の世界でも古くから行われている。1975年に発表された『マクギル疼痛質問票』が有名だ。日本語訳版も作成されてはいるが、言葉のニュアンスを十分に反映しているとはいえず、方言が関わってくればなおさらである。

痛みを表す方言(お国言葉)を少し紹介しておこう。「ひらつく」「ひらめく」は皮膚がヒリヒリと痛むことであり、秋田、富山、九州東部、鹿児島の方言である。「せく」は胸や腹が締め付けられるように痛むことで、中国、四国、九州地方。「ずいつく」は高知で、きりでえぐられるように痛むことを指す。

また、これらの方言では、痛みのある部位が体の表面か内側かによって使い分けられていることが特徴である。たとえば「うずく」は体の内部が激しく痛むことであり、近畿~九州地方で用いられている。中国地方で「はしる」は染みて痛いことであり体の表面の状態を指すが、「にがる」は体の内部が痛い場合に使われている。このような使い分けは共通語にはないところが興味深い。

しかし、患者さんからいきなり「ずいつく」と言われても、わからないよねえ。

森本昌宏

もりもと・まさひろ 祐斎堂森本クリニック(06・4800・3010)顧問。平成元年、大阪医科大学大学院終了。同大講師などを経て、22年、近畿大学医学部麻酔科教授、31年、大阪なんばクリニック院長。令和6年4月から現職。日本ペインクリニック学会名誉会員。

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