コロナ死者は年3万人、大半が高齢者 シニアへの定期接種スタート 100歳時代の歩き方
産経ニュース / 2024年11月10日 9時0分
10月から、65歳以上の人らを対象とした新型コロナウイルスワクチンの定期接種が始まった。新型コロナの感染症法上の位置づけが5類に移行して約1年半。予防に向けた意識は緩みつつあるが、一部の高齢者や基礎疾患を持つ人らにとっては、感染すれば重症化リスクをはらむ病気であることに変わりはない。専門家らは、社会全体が予防に向けた意識を持ち続ける重要性を指摘する。
新型コロナ流行の第1波の頃から、診療を続けてきた「多摩ファミリークリニック」(川崎市)。今夏の第11波を経た今も、来院する患者の姿が見られる。
大橋博樹院長によると、外来を訪れるコロナ患者の多くは、喉の痛みや咳など一般的な風邪症状を訴えて受診。37~38度程度の発熱があっても、対症療法により1~2日ほどで解熱し、快方に向かうという。
一方、罹患後数週間~数カ月たっても「痰の絡む咳が続く」「香りや味を今までのように感じられない」と訴える患者もいる。訪問診療で診ている寝たきりの高齢者らが感染すれば、入院が必要になることもあるとする。
「症状が重くなる人は本当に少なくなった。それでも普通の風邪とはやはり違う」。大橋院長は新型コロナの診療の現状をそう語る。
東京都小平市にある「むさしの病院」でも、コロナ患者の入院は絶えない。鹿野晃院長は「流行株の弱毒化により、肺炎が急速に悪化してエクモ(人工心肺装置)が必要になるといった人はほとんどいなくなった」とする一方、「一部の高齢者や基礎疾患を持つ人が感染すれば、重症化する恐れがあることは変わらない」と話す。
救急搬送されてくるコロナ患者は感染を機に、咳や熱などで体力が奪われて飲食ができなくなったり、誤嚥性肺炎を併発したりして全身状態を悪化させたケースが目立つ。ワクチン接種を受けてこなかった、あるいは、前回接種から1年以上たって免疫が落ちている場合、重症化の傾向がみられる。こうした人の中には、感染により重い肺炎に陥る人もいるという。
厚生労働省の人口動態統計によれば、新型コロナの死者は5類となった昨年5月~今年4月の1年で約3万2000人。同時期の季節性インフルエンザの死者(約2200人)の約15倍で、大部分を高齢者が占めた。
鹿野院長は「懸命に治療を施しても亡くなっていく人がいる。重症化リスクの低い健康な人もひとごととは思わず、風邪症状があれば体の弱い他者にうつさないよう行動に気を付けるなど感染対策に協力してもらいたい」と呼びかける。
「免疫つけること大切。接種を」
重症化予防に向けた新型コロナワクチンは3月末まで、「特例臨時接種」として生後6カ月以上の全世代が無料で接種できた。今年度からは、65歳以上と重い基礎疾患のある60~64歳を対象に原則費用の一部を自己負担とする「定期接種」に移行。10月から各地の医療機関で接種が始まった。
定期接種の費用は、国が1回当たり8300円を助成。自己負担額は最大で約7000円となるが、自治体によってはさらに上乗せで補助を行うところもある。最終的な自己負担額は2000~3000円程度となる場合が多く、無料とする自治体もある。
一方、若い世代など定期接種の対象でない人は「任意接種」となり、接種費用は原則全額(1万5000円程度)が自己負担となる。
使われるワクチンは5種類。今回から遺伝物質「メッセンジャーRNA」(mRNA)が体内で複製される「レプリコン」と呼ばれるワクチンが新たに加わった。いずれもオミクロン株の「JN・1」に対応しており、現在主流の「KP・3」に対しても効果が期待されている。
レプリコンについては「接種者から未接種者に感染する懸念がある」とする主張が一部にあるが、日本感染症学会など3学会は先月、接種した人から「周囲の人に感染させるリスクはない」との見解を示している。
新型コロナは夏場と冬場に大きな流行を繰り返しており、今冬も感染拡大が見込まれる。3学会は、高齢者らに対してワクチンの定期接種を受けるよう強く推奨するとの見解も公表。日本感染症学会の長谷川直樹理事長は「65歳以上になると感染すれば重症化しやすい。自身の身を守るためにも、ワクチンで免疫をつけることが大切。医師とよく相談の上、ぜひ接種してほしい」と話している。(三宅陽子)
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