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脳を知る 認知症による施設入所 タイミングは人それぞれ

産経ニュース / 2024年12月30日 7時0分

「人に迷惑をかけて生きたくないんです。こんな状態だったら施設に入りますよ」

80歳の男性が、物忘れの症状で奥さんに連れられ外来を受診されました。夜にあまり寝ないでごそごそと動いて奥さんを起こしては、実際にない妄想を言って奥さんと「そんなことない!」「ある!」と言い争いになっていました。奥さんは眠れず家での介護が限界になっていました。ガスや電気をつけっぱなしにしたり、夏の暑い夜でも冷房をかけなかったり、先日は熱中症で病院に入院しましたが、そのことも忘れていました。

認知症を調べる検査では30点満点中21点と低下しており、脳のMRIでは脳萎縮を認め、「アルツハイマー型認知症」と診断しました。抗認知症薬を処方して、夜に寝られるように薬を調整しましたが、あまり寝ないのはかわりないままで、奥さんが介護の限界であるのもかわらないままでした。そのため介護保険を早急に申請して、施設の入所も視野にいれて介護サービスを開始してもらうことにしました。

本人は私が施設に入ることも考えましょうと説明すると「人に迷惑をかけて生きたくないんです。こんな状態だったら施設に入りますよ。自分のためにも家族のためにも施設に入ります」と返事してくれるのですが、家に帰ると忘れてしまい、デイサービスへいくのも嫌がって、ずっと家の中から出ないで過ごしているとのことでした。

ところがある日、本人と奥さんと子供さんと妄想のために激しい口論になって、警察にもお世話になることがあり、それをきっかけに本人はショートステイを利用して、そのまま施設に入ることになりました。しばらくたって次に外来に来られたときは、以前まではけわしい表情が多かったのですが、非常に穏やかな表情になって、体も元気そうでした。家族の方も、今までは鬱(うつ)状態のような表情をされていましたが、元気な表情にかわりました。

認知症の方の施設入所のタイミングは、人それぞれです。このときがタイミングという決まったものはありません。家で介護している方も高齢の場合が多いので、骨折や腰や膝が悪くなったりして自分でトイレに行けなくなった場合に施設入所になる方が多い傾向です。認知症の場合はそれに加えて、排泄(はいせつ)を失敗しあちこち汚してしまう、徘徊(はいかい)し行方不明になる、火の不始末、幻覚・妄想、暴言暴力が強いなどがあると家族は非常に介護の負担が大きく、家での介護が限界になってしまいます。限界になると、介護者の健康が保てませんし、認知症の本人の安全も保てなくなります。その前にできるだけ早めに施設入所の準備をしておくことが大切です。

(橋本市民病院脳神経外科部長 大饗義仁)

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