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鳥インフル世界的拡大 米国では乳牛間で流行 熱処理ない牛乳には感染リスクも

産経ニュース / 2024年6月23日 10時0分

高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1)が、人を含む哺乳類の間で世界的に広がっている。最近では米国で飼育される牛の間で感染が拡大。牛から人への感染も確認された。人から人への持続的な感染は確認されていないものの、ウイルスが効率よく広がっていく能力を獲得する恐れもあり、日本国内でも危機感が高まっている。

南極の動物からも

国立感染症研究所の報告などによれば、H5N1の哺乳類(人以外)の感染報告は2003~19年の17年間では10カ国にとどまっていた。だが、20年~23年10月の約4年間で26カ国に増加し、感染が確認された哺乳類は48種以上に及ぶ。

野鳥の捕食や接触を中心に広がってきたとみられ、近年では南極地域のゾウアザラシ、国外ではペットの猫や犬などの感染も報告されている。

世界保健機関(WHO)に報告された人への感染事例は03年~今年4月9日時点で、インドネシアやベトナムなど東南アジアを中心に、計889人(うち死亡例463人)。20年以降だけでみると10カ国計28人(同8人)が報告されており、多くが感染が疑われる家禽との接触があった。

日本ではキタキツネとタヌキに感染が確認されているが、人への感染報告はない。

「牛から人」も

現在、動向が注視されているのが、米国で拡大する乳牛への感染だ。今年3月以降に確認が相次ぎ、今月10日時点で米国内12州に広がっている。

北海道大の迫田義博教授(ウイルス学)によると、牛の間でどのように感染が広がっていったかはまだ明確にはなっていないが、野鳥由来のウイルスが牛の口や鼻にくっついて感染し、さらに感染牛の搾乳作業を介して広がっていった可能性が考えられているという。

米国では牛と接触した酪農場の関係者3人の感染も確認された。目に結膜炎症状などが出たが、いずれも軽症という。

米疾病対策センター(CDC)のチームは、感染した牛と人から検出されたウイルスの配列について、基本的には鳥類の間で広がる遺伝的特徴を維持しているとの見解を示す。人への感染リスクは低いとみられているが、感染すれば、人によっては重症化することもあり得る。

迫田氏は「牛の間で長く流行が続くようなことになれば、結果としてウイルスが人に感染しやすいよう進化する恐れもある。まずは早急に感染のリスク要因を特定し、感染牛の選別・隔離措置などを通じ、感染の連鎖を断ち切ることが重要になる」と話す。

非加熱なら感染も

乳牛への感染となると気になるのが、牛乳を介した感染リスクだ。

東京大新世代感染症センターなどが、米国の感染牛の牛乳を調べたところ、1ミリリットル当たり最大1000万個以上のウイルスが検出された。この牛乳を、熱処理せず低温(4度)で保管すると、ウイルスは5週間にわたって感染性を維持。マウスに接種すると、全身の臓器でウイルスの増殖が確認されたという。

一方、米国の一般的殺菌法とされる63度で30分間(低温殺菌)、72度で15秒間(高温殺菌)で熱処理すると、ウイルス量は3万分の1以下に減少した。同センターの河岡義裕機構長は「感染した牛の牛乳を熱処理せずに飲めば人も感染する恐れがあるが、熱処理で、感染リスクは大きく減らすことができる」と話す。

米「製品は安全」

米食品医薬品局(FDA)は、牛乳製品は市場に出る前に加熱殺菌されており、安全性に懸念はないとの見解を示している。

坂本哲志農林水産相は今月18日の会見で、米国からの生体牛の輸入は2003年以降は停止されており「乳牛を介して感染が広がる恐れはない」と説明。ただ野鳥から牛が感染する恐れはあるため、生産者らに飼養管理の徹底を呼びかけた。

国内で流通する牛乳については「加熱処理を行っているので、人への健康影響はないと考えている」と話した。(三宅陽子)

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