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肺がんⅣ期、術後2年で胸膜に影 担当医からタグリッソ服用を示唆されたが… がん電話相談から

産経ニュース / 2024年9月10日 9時0分

西尾誠人医師

今回の「がん電話相談」は、ステージⅣの肺がんで術後の治療に悩む60代女性の相談に、がん研有明病院呼吸器センター長、西尾誠人医師が答えます。

──令和4年8月、肺がんと診断され、翌月に右肺の上葉を切除する手術(肺葉切除術)を受けました。

「手術時の病理検査結果はどうでしたか?」

──がんは長径16ミリの非小細胞がんで、手術前はステージⅠとのことでしたが、術後に胸膜播種(はしゅ)が判明しステージⅣと診断が変更に。EGFR遺伝子変異検査は陽性で、リンパ節転移はありませんでした。

「がんの転移には、血液の中に入って脳や肺、肝臓など他の臓器に転移する血行性転移、リンパ管に入り込むリンパ行性転移のほかに、播種という広がり方があります。がん細胞が肺の中から胸膜を破って出て、胸の中(胸腔=きょうくう)にこぼれ落ちてしまうのが胸膜播種です。小さく画像検査ではなかなか分かりません。術後の治療方針は?」

──結局、経過観察を続け、症状が悪くなったら分子標的薬で治療をとの方針で術後2年が経過しました。今年5月の検査で(肺がんの腫瘍マーカー)CEA値8.4、画像検査で胸膜に影があり、もう一度CTなどを撮って結果を見て治療再開を決めよう、と担当医に言われました。

「相談者の場合、がん細胞は胸膜に接するような形であったはずです。その一部が胸膜を越え、肺全体を包んでいる胸水にこぼれ落ち、胸腔で浮遊している状況です。複数のがん細胞が循環しているとなると、そのうち胸腔を出て他の箇所にも転移する可能性が高いと考えられるため、ステージⅣとなります。相談者のがん腫瘍は小さく、リンパ節転移もなく非常に早期のがんでしたが、場所が悪く転移の可能性が高くなり、病期が上がったのです」

──今後の治療は。

「例えば胸膜に播種が残っている場合、手術で切除するのは一つの方法ですが、これはあくまで播種の一部を切除するだけであり、他の胸膜にも播種が潜在的に存在して今後顕在化することが予想されます。そのため、顕在化した1カ所だけを切除することはあまりよい選択肢にならず、手術はお勧めしません」

──放射線治療は。

「放射線にはX線、ガンマ線、粒子線などがありますが、どの治療もがん細胞に照射して焼きます。ところが、どこにがん細胞があるのか分からなければ照射のしようがありません。どこに転移が出るかも分からない相談者の場合、全身に照射するわけにはいかず、治療効果を考えると照射するメリットは少ないです。ただ遠隔転移しやすい骨や脳に症状が出たらピンポイント照射は可能です」

──担当医からは分子標的薬のタグリッソ(一般名オシメルチニブ)の服用を示唆されています。

「EGFR遺伝子変異陽性ですので使用できます。がん細胞が今どこに隠れているか分からない状況で薬効が血液に乗って全身に回る薬物療法が一番理論的です。ただ効果と副作用を考慮すべきでしょう。相談者は術後2年間、無治療でも元気に過ごせています。もう少し様子を見てもいいと感じます。画像検査の結果を見ながら治療時期を主治医と相談し、自身が納得するのが重要です」

「がん電話相談」(がん研究会、アフラック、産経新聞社の協力)は毎週月~木曜日(祝日・振替休日を除く)午前11時~午後3時に実施しています。9月16日(敬老の日)は休みます。電話は03・5531・0110、03・5531・0133。相談はカウンセラーが無料で受け付けます。相談内容を医師が検討し、産経紙面やデジタル版に匿名で掲載されることがあります。個人情報は厳守します。

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