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HPVワクチン 男性接種助成広がる 19区市で開始肛門がんなども予防

産経ニュース / 2024年5月9日 11時34分

年間約3千人の女性が死亡する子宮頸(けい)がんなどの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を防ぐワクチンについて、女性だけでなく男性の接種も進めようと、費用を助成する動きが都内で広がっている。中野区が昨年に独自で始め、今年度から新たに18区市が助成を開始。ワクチンは性交渉による感染を防ぎ、女性の子宮頸がんの発症リスクを低減できる上に男性にとっても肛門がんなどの発症を抑える効果が期待できる。専門家は「まずはワクチンの効果を知ってほしい」と呼び掛ける。

(王美慧)

費用負担課題

渋谷区にある「フローレンスこどもと心クリニック」は昨年、9~18歳の男性を対象に、HPVワクチン1回分を無料で提供するキャンペーンを行った。定員60人の枠に対し、たった1日で2倍以上の140人の応募があったという。

クリニックの田中純子院長は「想定以上の反響で、クリニックの患者ではない人の応募が圧倒的に多かった」と驚く。保護者自身が子宮頸がんの患者など男性のHPV感染を予防する重要性を認識する人の応募が多かったという。

それまで男性の接種希望者はいなかったといい、田中院長は「高額な接種費用が大きなハードルの一つ」と指摘。一方、渋谷区が4月から男性の接種費用を全額助成する取り組みを始めたが、クリニックへの申し込みは同月末時点で1人。田中院長は「そもそも接種できることや男性にとっても重要なワクチンと十分に認知されていない」とする。

定期化も議論

HPVワクチンを全額公費で接種できる定期接種の対象は、小学6年~高校1年相当の女性のみ。男性は令和2年12月から任意で接種できるようになったが、全額自己負担のため約5万~6万円の費用がかかる。

男性の定期接種化に向け、4年8月から厚生労働省の審議会で議論が進むが、今年3月に費用対効果に課題があるとの見方が示され、まだ検討に時間を要する見込みとなった。

そうした中、国の判断を待たずに中野区は昨年から男性が無料で接種できる助成制度を開始。今年度からは都が区市町村への財政支援策として、男性の接種費用の補助額の半分を負担することを全国の都道府県で初めて決定し、助成する動きが広がった。

なぜ男性も接種が必要なのか。田中院長は「男性自身を守る効果がある上に、大切なパートナーが子宮頸がんで亡くなる可能性を減らすことにもつながる」と理由を挙げる。

年3000人が死亡

HPVは主に性交渉で感染し、多くの男女が一度は感染する可能性がある。ワクチンはすでに感染したウイルスを排除する効果はないため、性交渉を経験する前の年齢が定期接種の対象となっている。

通常、感染後数カ月以内に自然に治癒するが、ごく一部でウイルスがとどまり続けてがんになる。特に子宮頸がんは症例のほとんどがHPV感染が原因とされ、近年、若い女性の罹患(りかん)が増えている。

厚労省によると、国内では20~40代を中心に年間約1万1千人が子宮頸がんになり、治療で30代までに子宮を摘出する人は年間約1千人、死亡者は約3千人に上る。幼い子供を残して亡くなるケースが多いことから、「マザーキラー」とも呼ばれ、未然防止と早期発見が重要とされる。

男性が接種することで女性を子宮頸がんから守る効果に加え、男性に多い肛門がんや中咽頭がんのリスクを減らし、性感染症の尖圭コンジローマなどを防げる。

ただ、女性の接種率も令和3年度は26・2%と低く、男女ともに接種は十分に進んでいない。田中院長は「ワクチンを打つことによるメリットはすぐには感じにくいが、受けないことで命を落とす人もいる。多くの方にワクチンの効果を知っていただき、打つかどうか決めてほしい」とした。

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