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日本屈指の旗艦病院との共創 恵まれた環境に自信、海外への情報発信に注力 神奈川発 医療革命(中)

産経ニュース / 2024年11月11日 9時0分

今年5月、医療や健康に関する研究開発拠点「湘南ヘルスイノベーションパーク」(湘南アイパーク)で、韓国の中小ベンチャー企業部やベンチャーと、日本の大手製薬企業が会合する場が設けられた。拠点を生かした創薬、技術革新に向けた話し合いが行われ、韓国側からは「グローバル市場に挑戦できる機会を得られる」などと前向きな発言があったとされる。

湘南アイパークを運営するアイパークインスティチュートは海外への情報発信に力を入れており、12月にはアジアのスタートアップ(新興企業)と米投資家を結びつけるためのイベントを米・ボストンで開催する。世界を見据えた取り組みの背景には、拠点の恵まれた環境、ポテンシャルへの自信がある。

全国トップクラスの知見

「日本を代表するライフサイエンスの研究拠点と日本最大の民間病院グループの旗艦病院が隣り合わせている。行政とともに地域の方を含め、ヘルスイノベーションの拠点にしたかったというのがスタートです」

アイパークインスティチュートのパブリックアフェアーズヘッド、渡辺敬介氏はそう語る。渡辺氏が指摘する「旗艦病院」が、湘南アイパークに隣接する徳洲会湘南鎌倉総合病院だ。

同病院は昭和63年、鎌倉市の地域住民らによる約8万人以上の署名をもとに設立された。地域医療と先端医療の提供に取り組み、搬送される患者の受け入れは年間で約2万2000件。日本屈指の高度急性期病院としても知られ、全国トップクラスの総合病院でもある。そして湘南アイパークと三菱商事、横浜国立大などが取り組む未来の医療と健康の仕組みづくりにとっても欠かせない一員となっている。

仕組みづくりの大きな柱で、住民が診療、治療を受けるまでの在り方を大きく変える自動運転車による通院構想でも同病院の知見が生かされている。同病院の芦原教之事務長はこう説明する。「自動運転の車両の中で血圧を測ったり、体温を測ったり、家から病院までの時間にできることはたくさんある。病院の到着は診療のスタートではなく、始まりを自宅からに変えれば診療、治療までの待ち時間は大幅に減る」

ライフスタイル変える

徳洲会グループが掲げる理念は、医療をいかに平等に同じ水準で提供できるかを追求することにある。同病院が湘南アイパークなどと描く医療と健康の仕組みづくりは関係機関が連携して街全体がクリニックになっているようなイメージであり、つまり「医療と健康」を中心に据えた街づくりによって高い水準のサービスを広く提供していくといえる。

芦原事務長は、取り組みが進めば人々のライフスタイルの変化にもつながるとみる。例えば、市民の健康に関するデータの生かし方だ。体重や血圧、生活習慣などの市民の健康情報を医療機関が日常的に取得できれば、診断や治療に役立つ上に、診療より前の指導によって健康被害の予防につながる。医療機関同士でデータを連携して対応すれば、日常の健康維持効果はさらに高まる。

芦原事務長は「現時点で、一人の患者さんが、生まれてから亡くなるまで、どういった生活スタイルで、どういった食生活をしていたのかというデータがない。データをうまく活用できれば、健康という視点から社会を変えることができる」とみる。

医療人材の教育も

地域、世界という2つの視点を重視する同病院が、参考としてイメージしているのは米ミネソタ州ロチェスターに本部を置く総合病院「メイヨー・クリニック」だ。

芦原事務長によると、もともと小さな診療所から始まった同クリニックは米国を代表する病院となったが、地域住民や米国民に加え、全世界の患者に平等な医療を行うことをいまも目標とする。さらに医療関係者や患者、市民に対し、健康管理のための教育機関であることも視野に入れているとされる。

湘南鎌倉総合病院は10月23日、医学部と付属病院を持つ横浜市大と包括連携協定を締結した。診療や研究の深化とともに、医療人材の教育も目的の一つに挙げられる。そうした仕組みづくりは、メイヨー・クリニックを彷彿(ほうふつ)とさせる。(大谷卓、高木克聡)

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