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高齢者だけでなく若年の患者も…「過去の病気ではない」結核、入国前検査で水際対策

産経ニュース / 2024年10月28日 12時0分

肺に炎症を起こす結核が海外から持ち込まれるリスクの低減に向け、政府が水際対策の強化に乗り出す。患者の多いアジア6カ国から中長期間、滞在を予定している人に対し、結核が発病していないか入国前に調べる検査を義務付ける方針。新型コロナウイルス禍を経て訪日外国人は増加の一途を辿っており、今年度の運用開始に向けて関係各国と調整を進めている。

アジア6カ国の中長期滞在予定者に…

入国前検査の対象国に予定されるのは、フィリピン、ミャンマー、インドネシア、ネパール、ベトナム、中国。中長期の滞在希望者は日本政府が指定する現地の医療機関で胸部エックス線検査などを受け、結核の発病がないことを示す証明書の交付を受けることが必要になる。検査で発病が判明すれば、ビザは発給されない。

日本は2021年以降、3年連続で世界保健機関(WHO)が定める結核の「低蔓延(まんえん)国」となっており、人口10万人当たりの結核の新規患者数(罹患率(りかんりつ))は10人を下回る状況が続いてきた。

一方、入国前検査が予定されている6カ国の罹患率(22年)は、フィリピン638人▽ミャンマー475人▽インドネシア385人-などと、高い水準にある。

入国前検査は東京五輪・パラリンピック開催に合わせた2020年7月に導入が予定されていたが、コロナ禍の影響で延期となっていた。日本を目指すアジア各国の中長期滞在予定者は今後も増加が見込まれるため、政府は準備の整った対象国から運用を開始させたい意向だ。

新規患者は昨年超え

政府が結核の水際対策を強化する背景には、患者増への警戒感がある。

厚生労働省などによると、結核は1950年には日本人の死因のトップだったが、抗結核薬の開発などが進展。国内の新規患者数は2000年に4万人を下回り、減少傾向をたどってきた。

一方、近年でも新規患者は年間1万人を超え、死者も同1500人以上に上る状況だ。今年の新規患者は今月13日時点で1万2053人と、23年(1万96人)、22年(1万235人)、21年(1万1519人)を上回る勢いで推移。都道府県別では、東京1671人▽大阪1099人▽神奈川783人-と続く。

結核は空気感染するため、患者から容易に広がる恐れがあり、各地で集団感染の報告も相次ぐ。

東京都足立区は今年9月、区立中学校などで関係者ら11人が集団感染したと発表。青森県八戸市は結核と診断された20代男性と接触歴のあった20~40代の22人の感染を公表した。10月には、福島県郡山市の高齢者施設の関係者ら34人の感染が明らかとなっている。

結核予防会結核研究所の加藤誠也所長によると、結核は感染しても健康であれば免疫の働きで結核菌を押さえ込めるため、発病するのは感染者の約1~2割とされる。だが別の病気や加齢などで免疫力が低下すると、発病しやすくなる。

初期症状は風邪と似ており、せき、たん、微熱、だるさが2週間以上続く場合、早期受診が求められる。体重減や食欲減などが発病のサインとなっていることもある。国内では過去に感染していたり、新たに感染したりした高齢者が発病に至るケースが多いという。

近年は国内の新規患者のうち外国出身者が占める割合が増加傾向にあり、昨年は16・0%(前年は11・9%)に上った。活動範囲が広く、感染を広げる可能性が高まる10~30代の若年患者が目立つのが特徴だ。

加藤氏は「結核は過去の病気ではない。感染の拡大を防ぐには、発病者の早期発見、治療が重要になる」と説明。「健康的な生活、定期健診などを通じて体調変化に気を配り、気になる症状が見られれば速やかに医療機関を受診してほしい」と呼びかけている。(三宅陽子)

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