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子宮肉腫が両肺に転移 局所治療より化学療法を がん電話相談から

産経ニュース / 2024年7月9日 8時0分

瀧澤憲医師

がん患者やその家族が悩みを寄せる「がん電話相談」。今回は子宮肉腫(子宮体がんの一種)が肺に多発転移した68歳女性に、がん研有明病院の元婦人科部長、瀧澤憲医師が答えます。

――7年前に「変性子宮筋腫(子宮にできる良性の腫瘍)」と診断され、子宮と両側卵巣・卵管を摘出しました。それから4年後、右肺上葉に悪性腫瘍が見つかり摘出したところ、肺がんではなく、肉腫(悪性の骨や軟部の腫瘍)の転移でした。2年後、また右肺上葉に数個の転移が出現し、上葉を切除。さらに今年4月には左右両肺に複数の転移が見つかりました。実は、子宮の病変は変性子宮筋腫ではなく、悪性の平滑筋肉腫で、肺の腫瘍はその転移だったとのことです。手術前に正しく診断を下すのは難しいことだったのでしょうか。

「子宮筋腫と診断されて手術を受ける患者の1~2%が術後の病理診断で平滑筋肉腫であることが判明します。平滑筋肉腫は希少がんなので、病理診断に習熟していないと誤診することも珍しくないのです。子宮筋腫とみられる腫瘍が閉経後に急激に増大する場合は平滑筋肉腫を疑い、造影MRI検査を行います」

「平滑筋肉腫は良性の筋腫と異なり、造影剤が多量に取り込まれたり、逆に急激に増大する腫瘍に血流が追い付かなくなり、組織が変性壊死(えし)して囊胞(のうほう)が不規則な形態で出現したりという所見があります。一般的に、平滑筋肉腫はリンパ節転移は少なく、血行性転移(肺や骨転移など)が多いです」

――肺転移が見つかってから2度手術を受け、現在も両肺に複数の転移があります。主治医には化学療法(抗がん剤治療)を勧められています。

「今回は両肺にまたがる転移なので、手術や放射線などの局所治療ではなく、全身治療の化学療法が推奨となります。中心となる抗がん剤はドキソルビシンで、イホマイドなどとの併用療法も行われます。もし骨髄機能障害(白血球減少など)、消化器毒性(吐き気、嘔吐(おうと)、食欲不振)、心筋毒性(不整脈など)などが生じ、治療継続が難しくなればドセタキセルとゲムシタビンの併用治療も選択できます」

――免疫チェックポイント阻害薬や他の分子標的薬などは選択できないのでしょうか。

「数年前から、それぞれ子宮体がんに対しては、ペムブロリズマブやレンバチニブ、卵巣がんに対しては、ベバシズマブ、オラパリブ、ニラパリブなどが保険適用となり有用性が証明されつつありますが、子宮の平滑筋肉腫では証明されていません」

「平滑筋肉腫は悪性軟部腫瘍であり、それに保険適用がある分子標的薬(マルチキナーゼ阻害薬)のパゾパニブや抗悪性軟部腫瘍薬のトラベクテジン、微小管阻害薬のエリブリンなどを選択することもできます。しかし、これらはドキソルビシンなどの抗がん剤に比べて、殺細胞効果は弱く、病状を安定させて現状維持することが目的になります」

「がん電話相談」(がん研究会、アフラック、産経新聞社の協力)は毎週月~木曜日(祝日・振替休日を除く)午前11時~午後3時に実施しています。海の日(15日)は電話相談の受け付けを休みます。電話は03・5531・0110、03・5531・0133。相談はカウンセラーが無料で受け付けます。相談内容を医師が検討し、産経紙面やデジタル版に匿名で掲載されることがあります。個人情報は厳守します。

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